December 28, 2020

太陽光「過剰設備」と「出力抑制」で発電コスト削減!? 「暗黙のストレージ」で、蓄電池の容量を減らす

 Published Nikkei Technology - Mega Solar Business


「再エネ100%」実現戦略を分析

 「過剰な設置と出力抑制でクリーン電力100%を達成する」という、何ともショッキングなタイトルのウエビナー(WEB 上でのセミナー)が今月中に15日間、開催された。主催者は、クリーン・エネルギーを推進する非営利連合である米クリーン・エネルギー・ステイツ・アライアンス(CESA)である。

 電力会社では、必要以上の「過剰な発電所」は無駄な投資であり、太陽光を含む発電事業者にとって「出力抑制」は収入の減少を意味する。「過剰な設備と出力抑制」を推奨するようなセミナータイトルには、誰しも違和感を持つだろう。

 この発表は、電力需要を100%再生可能エネルギーで賄うための研究活動の一環になる。具体的には、クリーン・エネルギーに関するリサーチを行う米クリーン・パワー・リサーチ(Clean Power Research)が、米中西部の地域送電機関(RTO)であるミッドコンティネント独立システムオペレーター(MISO)のサービス地域全体で再エネ100%を模索する研究・調査分析の一部である。

 この分析の結果としてMISO地域において、太陽光と風力発電の「過剰な建設と出力抑制」が最も費用対効果の高い「再エネ100%」実現戦略であることを示した。 

 「再エネの拡大と迅速な送電」を効果的に実現することを目指し、発電設備のテクノロジーと最適な導入量、そして需給バランスを調整するテクノロジーを見出すため、シナリオ分析が行われた。クリーン・パワー・リサーチでリード・アナリストを務めるマーク・ペレズ氏がそれぞれのシナリオと分析結果を発表した。

なぜ「暗黙のストレージ」なのか?

 まず、(1) 発電設備のテクノロジーには、太陽光と風力発電、(2) 需給バランスを調整するテクノロジーには、リチウムイオン蓄電池などの電力貯蔵、そして「暗黙のストレージ(貯蔵)」との位置づけで「過剰な発電設備」とその「出力抑制」を考慮した。どうして「暗黙」と呼ぶのかという質問にペレズ氏は、「過剰な発電設備と出力抑制は、事実上、需給バランスを調整する機能を持っているから」と答えた。

 シナリオでは、太陽光と風力発電、さらに電力貯蔵のコストを大きく左右するテクノロジーの発展度合いを、2025年に「高いケース」「低いケース」、そして2050年に「高いケース」「低いケース」の4つのシナリオも加えた。...Read More Here


December 16, 2020

住宅太陽光がさらに大容量化、「蓄電池併設」も増加 データで見る2019年の米国分散型太陽光市場

 Published Nikkei Technology Mega Solar Business


 今月、米エネルギー省(DOE)の研究所であるローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)が、2019年度(1~12月)における分散型太陽光発電の米国市場に関する統計データ分析を発表した。

 ここでいう「分散型太陽光発電」とは、屋根置き、または地上設置で連系出力5MW以下の、住宅用と非住宅用の太陽光発電を対象としている。非住宅用システムは、大型と小型に分けられており、「小型」は100kW以下、「大型」は100kW以上5MW未満となっていてメガソーラー(大規模太陽光発電所)も含まれている。

 ちなみに、同研究所が収集したデータは、2019年までに設置された190万件を超えるシステムが含まれており、同期間中に全米で実際に設置・導入されたすべての分散型太陽光システムの82%をカバーしている。

住宅用太陽光の規模はかつての3倍

 2019年の住宅用システムの規模を見ると、中間値(データを小さい順に並べた時の中央の値)は6.5kWで、前年比1.25%増であった。10年前の2009年は4.7kW、データ収集が始まった1999年の中央値は2.3kWだったので、21年間で住宅システムの平均的なサイズは、実に約3倍に大容量化していることになる(図1)。

図1●米国セグメント別分散型太陽光発電のシステムサイズの推移(注:折線=中間値、左=住宅用、右=非住宅用)
(出所:Lawrence Berkeley National Laboratory)

 非住宅用システムの中間値は、データ収集が始まった2001年は5.7kWに留まっていたが、2009年には16kWまで大きくなってきた。ただ、非住宅用システムの大規模化は、ここにきて頭打ち傾向にあり、2019年の中間値である40kWは前年比13%減で、初の減少を示した。... Read More Here

December 1, 2020

1GW超える米最大「ギガソーラー」着工、AT&T・ホンダなどとPPA テキサス州に建設、先進企業5社・3自治体が電力購入

 Published Nikkei Technology Mega Solar Business

1.31GWで総投資額16億ドル

 テキサス州で現在、米国で最大規模となる1.31GW(1310MW)もの巨大な太陽光発電所の開発が進んでいる。この「ギガソーラー」の建設は今年7月に既に始まっていて、完成した時の総発電量は、米国一般家庭の約30万世帯分に相当する消費電力になるという。

 「サムソン・ソーラー・エネルギー・センター(以後サムソン)」と呼ばれるこのプロジェクトは、テキサス州の北東部に建設されていて、総投資額はなんと16億米ドル。

 現在建設済み・稼働中の米国最大規模のメガソーラー(大規模太陽光発電所)は、連系出力579MW・太陽光パネルの出力747.3 MWの「ソーラー・スター」と呼ばれるプロジェクトで、2015年7月にカリフォルニア州で稼働を開始した。稼働時は、米国で最大規模だけでなく、世界で最大規模でもあった(図1)。

図1●現在米国の稼働中で最大規模のメガソーラー「ソーラー・スター」
(出所:SunPower)

「ジェミニ」は896MW

 意外なことに、米国では5年が経った今まで「ソーラー・スター」を超える規模のメガソーラーが出てこなかった。

 そんななか、今年5月にネバダ州南部のモハビ砂漠付近に計画されている「ジェミニ・ソーラー」プロジェクトと呼ばれるメガソーラー事業が連邦政府の承認を得て、ようやく「米国最大規模」のメガソーラーの記録を更新しようとしていた。そのサイズはパネル出力896MW・連系出力690MWで、出力380MW・容量1400MWhのリチウムイオン蓄電池によるエネルギー貯蔵も併設される予定である。この発電所の電力は、ネバダ州で地域独占電力会社NVエネルギー(NV Energy)に25年間の長期電力購入契約(PPA)を通じて供給される。ちなみに、2023年12月に商業稼働を開始する予定である(図2)...Read More Here

図2●建設に取り掛かろうとしている「ジェミニ・ソーラー」の計画図
(出所:Quinbrook Infrastructure Partners and Arevia Power)



November 24, 2020

米大規模太陽光のトレンド、「追尾型」のコストが大幅低下 「薄膜系+追尾型」が「結晶系+追尾型」に迫る

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「発電事業用」太陽光は30GWに迫る

 今月、米エネルギー省(DOE)の研究所であるローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)が、2019年度(1月~12月)における米国発電事業用の太陽光発電市場に関する統計データを発表した。

 同研究所によると、2019年に稼働した連系出力5MW以上の地上設置型太陽光発電設備は合計103件で、合計出力は前年比16%増の4.58GW-AC(連系出力・交流ベース)だった。ちなみに、2019年末までの累積設置数は792件で、総累積出力は29GW-ACを超えている(図1)。

図1●米国における地上設置型太陽光発電設備の年間導入容量推移
(出所:Lawrence Berkeley National Laboratory )


 「発電事業用」といっても、その定義は米国内でも異なる。

 米エネルギー省(DOE)・エネルギー情報局(EIA)の定義は、所有権、系統連系の接続が配電網か送電網に関わらず、総出力が最低1MW-ACの発電設備としている。米国太陽エネルギー産業協会(SEIA)が、コンサルティング会社である英ウッドマッケンジー社と共同で出版している市場レポートで使われる「発電事業用」の定義は、発電設備のサイズではなく、発電された電力を受け取る仕組みで決めている。「発電事業用」とは、 電力会社が所有する発電設備、または、自家消費ではなく発電された電気が電力会社に直接売られる発電設備となっている。つまり、固定価格買取制度(FIT)などを利用する小規模の設備も含まれることになる。

「追尾式」が88%占める

 一般的に米国市場の動向について言及される場合、SEIAのデータを引用することが多いが、LBNLは、SEIAと違ったアプローチを使い、発電事業用の定義は、「5MW-AC以上の地上設置型」の太陽光発電設備としている。したがって、数MWを超えた発電設備でも、屋根置型の場合、LBNLによる「発電事業用」には含まれない。ここでは混乱を防ぐために、LBNLのデータは、発電事業用ではなく、「地上設置型」太陽光発電設備と呼ぶことにする...Read More Here

November 12, 2020

2020年の太陽電池市場、「単結晶」が市場を独占 成長株の「n型」を牽引するテクノロジーは?

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83%が「単結晶」

 米太陽光発電市場のリサーチ・コンサルティング会社・SPV マーケットリサーチが2020年10月に発行した太陽光発電市場レポートによると、2020年第1四半期から第3四半期(1月~9月)における世界における結晶シリコン型太陽光パネルの出荷量は、なんと83%を単結晶シリコンテクノロジーが占めたという。

 同レポートによると、2020年における単結晶シリコン型太陽電池セル(発電素子)の世界での出荷量は132.8GWで、 結晶シリコン型太陽電池セル全体の全世界における出荷容量の75%を占めると予想している(図1)。

図1●2020年・太陽光発電の世界市場における結晶シリコン系太陽電池のタイプ別シェア予測
(出所:SPV Market Research)




 実は、かつて1980年代から1990年前半には、スタンダードな「単結晶」セルが出荷量を独占していた。それが1998年になると、製造コストの低い「多結晶」セルが市場でシェアを伸ばしてきた。1999年から2009年の間、ドイツを含むヨーロッパで、太陽光発電の普及政策の一つである全量固定価格買取制度(FIT)の導入で市場が加速的に拡大し、「多結晶」セルが過半数のシェアを獲得した。この時期になると、中国の太陽電池メーカーが、ヨーロッパ、日本、そして米国市場で、シェアを奪い始めた。

PERCで単結晶への移行が加速

 そんななか、2012年に中国などのモジュール(太陽光パネル)メーカーは、「裏面不動態型セル」(PERC: Passivated Emitter and Rear Cell)を生産品目に加え始めた。当初、PERCには「p型単結晶」を使った製品と、「多結晶」シリコンを使った製品の両方があった。

 だが、徐々にPERCを手掛けるメーカーの多くは、主に「p型単結晶」による製品に絞っていった。PERC技術は生産において、製造コストは高かったが、潜在的なマージンの上昇と より高い変換効率という利点が市場で受け、メーカーは単結晶によるPERCに転換した。...Read More Here

November 5, 2020

人気の「ソーラー放牧」、150MWサイトで羊1050頭の計画も 機械除草から脱却で、O&MコストとCO2 削減

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「ソーラー・グレージング」で650頭

 米ソーラー・シープLLCのオーナであるジュリ・ビッショプ氏は現在650頭を超えるシープ(羊)を米国東海岸のニュージャージー州で飼っている。同氏の羊は、太陽光パネルが何十列にも渡って設置されている数十エーカーの牧草地で放牧されている。

 ソーラー・シープLLCは、ニュージャージー州中南部にある地上設置型メガソーラー(大規模太陽光発電所)に「植物管理サービス」を提供している。

 このサービスは一般的に「ソーラー・グレージング(放牧)」と呼ばれ、羊を主にした家畜を利用した地上設置型太陽光発電所の除草作業を含む植生管理方法である。太陽光発電所オーナー、またはデベロッパーに包括的な土地利用法を提供するこのサービスは、現在、米国で人気が高まっている(図1)。

図1●メガソーラーで放牧される羊
(出所:Solar Sheep LLC)


「馬」から「羊」に転身

 「ソーラー・シープ」は元々ソーラー用のビジネスではなかった。さらに、ビッショプ氏は羊ではなく、馬のブリーダーであった。同氏が羊に関わり合うようになったのは、同氏のマンディという名の牧牛犬の一種であるオーストラリアン・キャトル・ドッグを牧羊犬にトレーニングするためにまず数頭の羊を購入したことがきっかけになった。

 その後、数頭の羊がさらに増え、同氏は馬のブリーダーから羊のブリーダーに転身した。 同氏が育てる羊の種類は米国で開発されたカターディン羊と呼ばれ、羊毛ではなく食肉(ラム)や繁殖用である。

 同氏が自宅の農場で羊を飼育し始めた頃、増える羊を育てるのに十分な牧草地を持っていなかった。ある日、車を運転していた時、草やクローバーがたくさん茂る15エーカー(約6ha)に及ぶソーラーファームが目についた。 「ここは、自分の羊にもってこいの場所。きっと誰かが草刈りにお金を払っているはず。私の羊だったら(除草を)より簡単にできる」と思い、その太陽光発電所の事業者に交渉に向かった。...Read More Here 

October 26, 2020

地域新電力8社、共同で500MWのエネルギー貯蔵を設置へ 「長周期」需給変動に対応、再エネ大量導入とレジリエンス強化

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「長周期」対応の重要性が増す

 米国では今年8月に起こった大規模な山火事、猛暑などで大停電が起こり、カリフォルニア州の電力システム(グリッド=電力系統)の信頼性とレジリエンスがまた大きく見直しされている。太陽光発電を含む再生可能エネルギーの導入量では他州を引き離してダントツのカリフォルニア州だが、再エネを効率良くグリッドに統合しつつ、信頼性を高め、災害などに対するレジリエンスを強化するには、電力を長期間、放電できる「長周期」エネルギー貯蔵調達が必要になってくる。

 カリフォルニア州では、大手電力会社だけではなく、地方自治体による地域新電力も長周期エネルギー貯蔵の調達へ乗り出した。

 今月(10月)カリフォルニア州の8つの米国コミュニティ・チョイス・アグリゲーション(CCA)が共同で出力500MWもの長周期エネルギー貯蔵の提案依頼書(RFP)の公募を出した(図1)。

図1●8つのCCA共同での長周期エネルギー貯蔵のRFP(出所:Silicon Valley Clean Energy)


ちなみに、CCAは日本の地域新電力に似ていて、市や郡などの地方自治体が設立し、自ら発電所を開発、または発電事業者から電力調達し、 既存の大手電力会社が所有する送配電網を利用し需要家に電力を供給する 電気小売り事業を展開している。カリフォルニア州では、電力小売りが全面自由化しておらず、3つの大手電力会社が電力の送配電と供給を地域独占しているが、2002年に成立し法律で、地方自治体がCCAを設立することにより、地域の需要家に電力供給先の選べるようになった。特にCCAは、既存の大手電力会社との差別化として、再エネの比率がより高いプランを提供し、その再エネも「地産地消」型で調達している。...Read More Here

October 14, 2020

2019年版・米企業の太陽光発電導入ランキング 3位はウォルマート…、では、1位と2位は?

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企業の導入量は10年で15倍

 米国の大統領選挙まで、すでに1カ月を切った(投票日11月3日)。大統領選のテレビ討論会では環境問題に関する「グリーンディール」、「フラッキング」、そして「パリ協定」などが討論されている。

 ちなみに「グリーンディール」とは、気候変動対策をコロナ禍からの経済復興と位置付ける考え方、「フラッキング」とは、シェールオイルやシェールガスを水圧破砕による坑井掘削で生産する手法で、米国内で石油・天然ガス生産を飛躍的に伸ばした一方で、有害な化学薬剤を使うため地下水脈の汚染など環境問題が指摘されている。

 フラッキングの禁止か規制緩和か、パリ協定に復帰するのか否かなど、米国の環境政策が次の大統領で大きく変わると予想されている。

 2016年に発足した米トランプ政権が、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱すると発表した時、米国の再生可能エネルギー市場が大きく後退すると予測されたが、そんな懸念とは裏腹に、米国内では、企業による独自の気候変動対策に取り組む動きが加速した。

 つまり、米企業は、連邦政府の法令・規制、方針に頼らず、または、義務付け無しで、自主的にクリーンエネルギー への転換に向け舵をきっているのである。

 実際、米国太陽エネルギー産業協会 (SEIA)によると、現在米国企業によって設置された太陽光発電容量は、10年前の2009年と比べると15倍にもなるという。2009年には、当時州政府による助成制度が確立していたカリフォルニア 州と東海岸のニュージャージー州に太陽光発電の導入は偏っていたが、その後、太陽光発電のコスト低下に伴い州政府の助成制度がほとんどなくなったにもかかわらず、企業による太陽光の導入は他の州でも拡大した(図1)。... Read More Here

図1●米国内における企業による太陽光発電導入量推移(上:2009年、下:2019年)(円の大きさは導入容量に比例), Credit SEIA

October 6, 2020

加州の山火事、太陽光発電にも影響、発電量が半減! 「オレンジ色の空」と「灰」で日射量が大幅に低下

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不気味なオレンジ色の正体

 「バリバリバリ、ドッカーン」――。けたたましい雷鳴と同時に、窓から見える、夜明け前の暗い空に、いく筋もの眩しい光が横に走った。米カリフォルニア州の乾燥した天候の中でこんなに激しい稲光は、今までに見たことがない。

 8月16日の朝、カリフォルニア州北部全体で異常に激しい雷に見舞われた。その際に発生した稲妻の数はなんと4000近くだったという。地上にまで及んだ落雷は、その後同州北部と中部で大規模な山火事を引き起こした。

 至る所で起こった山火事で、空は不気味なオレンジ色に染まり、さらに空からは雪のように白い灰が降ってきた。

 実は、この「オレンジ色」の空は、同州に導入済みの数kWの屋根置き太陽光発電システムから数百MW級のメガソーラー (大規模太陽光発電所)にまで、「ネガティブ」な結果をもたらした。

 空一面がオレンジ色に染まるという現象は、山火事による煙、そして灰が太陽の光を遮って反射したために発生した(図1)。

図1●大規模山火事で空だけでなく、地上までオレンジ色に染めた


「PM2.5」で太陽光が散乱

 カリフォルニア 州の送電系統を管理するカリフォルニア独立系統運用機関(CAISO)によると、CAISOの電力系統には同州に導入された発電事業用メガソーラーの90%が接続されているが、2020年9月最初の2週間における平均的な発電量を見ると、大規模な山火事のため、2020年7月の平均から30%近くも減少したという。

 山火事の煙には、「PM2.5」と呼ばれる、2.5μm(マイクロメートル)以下の小さな浮遊粒子状物質が含まれている。ちなみに、PM2.5は、大気汚染物質の1つである。

 一般的にPM2.5の濃度が高まると空に霞みがかる。これはPM2.5が太陽光を散乱させて生じるといわれる。この現象が起きると、太陽光が地上まで十分に届かなくなる。つまり、山火事による煙は、太陽光パネルに到達する日射量を減らし、その結果、発電量が減ることになる(図2)...Read More Here

(出所:US Energy Information AdministrationがCAISOとCalifornia Air Resources Boardのデータを元に作成)

September 27, 2020

加州「太陽光・蓄電池マイクログリッド」、地域の担い手が連携 非常時は空港・沿岸警備に電力供給し、レジリエンス強化

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送電網の末端に位置

 米カリフォルニア州北部にあるサンフランシスコ市から北に約200マイルに位置するハンボルト郡は、同州で2番目に大きな自然の入り江であるハンボルト湾に隣接していて、さらに、レッドウッドからなる国立公園や海岸山脈もある。

 同郡は、他のコミュニティから孤立した農村で、送電網の末端に位置する。さらに、津波、地震、土砂崩れ、洪水、そして山火事などの自然災害を受けやすく、「エネルギー・レジリエンス」はこのコミュニティにとって重要な課題となっている。

 そんなハンボルト郡で、「レッドウッド・コースト・空港・マイクログリッド(RCAM)」というプロジェクトが立ち上がった。このマイクログリッドは、出力2.2MWの太陽光発電に、容量8.8MWh(連系出力2.2MW)の蓄電池といった分散型電源から構成される(図1)。


テスラが太陽光と蓄電池

 レッドウッド・コーストのエネルギー・オーソーリティ(RCA)でエグゼクティブ・ディレクターを務めるマシュー・マーシャル氏は、「RCAMは、レジリエンス対応へ必要性、大手電力会社の持続可能なスマートグリッドへの転換、そして地方自治体の発電所とエネルギー貯蔵所有への関心の高まりという背景があります」と話す。ちなみに、RCAは、コミュニティー・チョイス・アグリゲーション(Community Choice Aggregation: CCA)の1つで、日本の地域新電力にとても似ている。地方自治体の関与した電力小売事業者で、地域を独占する大手電力に対して、より高い再エネ比率で、地元に換言しながら地産地消を目指している。

 このプロジェクトに関与するプレーヤーは、以下になる。

●ハンボルト州立大学のシュアツ・エネルギー・リサーチセンター:主任コントラクター兼テクノロジーインテグレーター

●パシフィックガス&エレクトリック(PG&E):カリフォルニア州北部地域をサービス管轄とする大手電力会社で、地元の配送電網を運営

●RCA:地元のCCAで、RCAMの分散エネルギー資源(DER)の所有者兼事業の投資家(600万米ドルを投資)

●ハンボルト郡:分散型電源が設置される空港の所有者・運営者

●カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC):地域マイクログリッド構築支援事業として、プロジェクトコストの約半分(500万米ドル)を補助金として支給

 さらに、システムのハードは、米テスラが太陽光発電と蓄電池、そして、コントローラーは米SEL社が提供する。...Read More Here

September 17, 2020

太陽光への出力抑制率が12%に、季節を超えた貯蔵に期待 「揚水式水力」が長周期のエネルギー貯蔵として再評価(後半)

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「古いものが新しい」

 米国水力発電協会(National Hydropower Association:NHA)は、「全ての古いものが、また新しい」と、水力発電のカムバックを表している。その意味するところは、 発電源としてだけでなく、水力を「貯蔵」として捉えている。揚水式貯蔵は、米国で最も大規模で、最も古いエネルギー貯蔵テクノロジーなのだ。

 ちなみに、日本の電気事業連合会によると、揚水式水力発電は、「発電所の上部と下部に大きな池(調整池)をつくり、電力需要の多いときは上の調整池から下の調整池に水を落として発電し、発電に使った水は下部の調整池に貯めておく 」となっている。さらに、「日本では特に夏の昼間にはエアコン、屋内照明などに最も多くの電力が必要とされている。一方で、夜は逆に電力消費が少なくなる。そこで、電力需要の少ない夜間に火力・原子力発電所の電力を利用して、揚水発電下部の貯水池から上部の貯水池まで発電用水を汲み上げ、再び昼間の発電に使う」と、解説されている。

 米カリフォルニア州では、「温室効果ガス(GHG) 排出フリー電源システム(ゼロ・エミッション)への移行」を達成するため、太陽光発電の導入拡大と化石燃料による火力発電所の廃止を同時に進めている。そんな、同州にあっては揚水式貯蔵の位置づけが日本と違う(図1)。

図1●カリフォルニア州にある揚水式貯蔵の1つ(出所:The Walsh Group)

太陽光で昼間に水を組み揚げ

 電力の供給が高い太陽が照っている時に、下部調整池に貯まった水を上部調整池にくみ揚げ、電力需要の高い太陽が沈んだ後に、上部調整池にためられた水を下部調整池に放水し、電力を供給する。

 昼間の太陽光発電による余剰電力を活用して、水を組み揚げ、夕方の電力ピーク時に水を落として発電する。この活用方法により従来の蓄電池とは比較にならない量の電力を貯蔵することかができ、さらに、夜間の火力発電や原子力発電の削減にも繋がり、真のGHG排出フリー電源システムが形成できる。

 このモデルが現在成り立つのは、太陽光発電導入拡大により、太陽光発電の供給と実際の電力需要のミスマッチが起こっているからだ。カリフォルニア州では、需要ピークは太陽光の出力が減少する夕方から夜になる。需要の小さい昼間に大量に発電する太陽光発電は、過剰供給を起こし、出力抑制の対象となってしまう。昼間の太陽光発電の出力を抑制すると同時に、夕方にかけて急に立ち上がるピーク需要を満たすため、化石燃料による火力発電を稼働させると、 本来の意図と反対にGHGの排出量を高めることになる。 ...Read More Here

September 7, 2020

太陽光の大量導入を支える「古いテクノロジー」!? 「揚水式水力」が長周期のエネルギー貯蔵として再評価(前半

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長周期」の調整力不足が露呈

 このコラムの前回記事(米加州で大停電!、再エネ導入で前進も系統の安定運用が後手に)で、米カリフォルニア州が「温室効果ガス(GHG) 排出フリー電源システム(ゼロ・エミッション)への移行」を達成するため、太陽光発電の導入拡大と化石燃料による火力発電所の廃止を同時に進めるが故に、系統運営に問題が生じている実態を取り上げた。

 一方、昼間に太陽光発電からの電力を充電し、夕方のピーク時に放電できるリチウムイオン電池がメインとなるエネルギー貯蔵テクノロジーが、天然ガス火力の代替に再エネを増やしていく上で重要な役割を果たす、という方向性をこれまでのコラム記事で再三、触れてきた。

 住宅用蓄電池、さらに発電事業用のリチウムイオン電池と言えば、米国の著名起業家で、話題に事欠かないイーロン・マスク氏の創業した企業「テスラ」がまず頭に浮かぶであろう。

 テスラの住宅用蓄電池「パワーウオール」、発電事業用蓄電池「パワーパック」は、革新的な蓄電テクノロジーとして、人をワクワクさせ、市場を斬新に変え、大きなシェアを占めることが期待されるものだ。

 しかし、今回、カリフォルニア州で起きた大規模停電で、重要性が評価されたのは、こうした新タイプの蓄電テクノロジーばかりではない。大停電で、明らかになった課題の1つは、長時間での需給バランスの改善に効果のある「長周期エネルギー貯蔵」の必要性である。こうした長周期エネルギー貯蔵テクノロジーで最も活用されているのは、実は「古いテクノロジー」である揚水式水力発電である(図1)。

図1●米加州で最大規模の揚水式水力発電 (1212MW) が導入されているウイスホン湖
(出所:California Energy Commission)


蓄電池の貢献は「ゼロ」!?

 米国でエネルギー貯蔵市場が立ち上がった当初は、調整力市場を通じて、短時間の充放電で生み出した調整力を系統運用事業者に提供する「アンシラリーサービス」がメインで、同サービス用には、「短周期」向け需給改善システムが活用された。

 近年では、カリフォルニア州やニューヨーク州など多くの州政府がエネルギー貯蔵設備の導入を義務化し、 昼間に太陽光発電からの電力を充電し、夕方のピーク時に放電する「シフト目的」の長周期対策での使用が拡大している。しかし、昼間から夕方以上のもっと長期の時間、または数日をカバーできるエネルギー貯蔵が注目され始めた。... Read More Here

August 25, 2020

米加州で大停電!、再エネ導入で前進も系統の安定運用が後手に 「世界5位の経済大国」でも、電力網は発展途上国以下!?

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「革新的な州にとって容認できない」

 依然として、世界を脅かす新型コロナウイルスで自粛ムードが続く中、米国では8月中旬に突然、猛暑が訪れた。とはいえ、夏なのだから当たりのことにも思える。

 そんななか、世界をリードするハイテク企業が集まるシリコンバレー、世界を魅了するエンターテイメントが生まれるハリウッドなど、世界の先端を走るカリフォルニア 州で、何と電気の供給不足で、停電に陥ってしまったのだ。

 カリフォルニア州を1つの国だとすれば、その経済規模は英国を上回り、米中日独に次ぐ世界5位に相当する。そんな先進経済大国で、猛暑によって停電が起きた背景には、どんな事情があったのか。電力系統は、途上国並みということなのだろうか。

 同州のギャビン・ニューサム知事は今回の停電を「国の最大かつ最も革新的な州にとって容認できない、不適合」と表現した(図1)。


図1●電力の専門家と今回の電力不足の緊急会議を行うカリフォルニア州知事(黄緑色の囲み内)
(出所:Office of Governor Gavin Newsom)


 国内のメディアでは、不十分な電力供給のために同州が計画停電を実施することは、2001年のエネルギー危機以来、ほぼ20年ぶりと報道されている。だが、実際には、「停電」に関して言えば、もっと頻繁に起こっている。

停電すると自家発電機がうなり声

 筆者はサンフランシスコから南に車で約1時間の、空高くそびえ立つ赤スギで有名な州立公園近くに住むが、ここ数年間で何回停電に見舞われたか、とても数え切れない。

 強風が吹くと停電。雨が続くと停電。乾燥が続くと停電、と言った具合だ。

 特に、強風と乾燥が重なった場合、老朽化して整備の不十分な送電線が火元になり大規模な山火事を起きるのを防ぐため、数百万人の電力を停止するという意図的な停電も起こる(図2

 こんなに脆い電力網を持つのは、米国内のみならず、世界でもトップ規模の大手電力会社パシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)なのである。こんな状態であるから、地域の住民のほとんどは自前のジェネレーター(自家発電機)を持っており、停電とわかると、各自外に出て、ジェネレーターをブルンブルンと稼働させるのである。停電が2時間続くのか、2日以上になるのかも分からない、全く発展途上国のような生活になる。

「複数の災厄」で破滅的に

 問題の停電は8月14日の夕方に始まった。

 カリフォルニア州の送電系統を管理するカリフォルニア独立系統運用機関(CAISO)は、停電後、初めての公的な声明で、今回のイベント(停電)を「パーフェクト・ストーム」と表現した。これは、「複数の災厄が同時に起こり、破滅的な事態に至ること」を意味する。Read More Here

August 16, 2020

「草花に囲まれた」メガソーラー、周辺農家と共存共栄 発電所内に在来種を育て、ハチの繁殖を促す

 

「ポリネーター」の繁殖を促す

 米国食用鶏肉生産・加工大手のパーデュー・ファームズ(Perdue Farms)の本社が隣接する土地に、年間発電量3700MWh、出力2.8MWの地上設置型のメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある。太陽光パネルの周りには、ブラックアイドスーザン、アルシケクローバー、ノコギリヒマワリ、細い葉のトウワタ、パープルコーンフラワーなど、地域の在来植物を含む41種類の異なる花や草が植えられている。

 2018年に播かれた植物の種は今年2020年の春にようやく花を咲かせ、今年6月、メリーランド州サリスベリに本社を構えるパーデュー・ファームズは、「ポリネーター(花粉媒介者)に親切な」太陽光発電設備を米国鶏肉生産産業で最初に導入した会社と発表した(図1)。

図1●ハルシャギク、セイヨウノコギリソウが生える「ポリネーターに優しい」太陽光発電設置
(出所:Perdue Farms)

 米農務省によると、米国の農家が作物の受粉を依存しているミツバチなど、 ポリネーターが大幅に減少しているという。農家は、この深刻なミツバチ不足に悩まされているのだ。

 米エネルギー省のプロジェクトの一環として、アルゴンヌ国立研究所は、太陽光発電設備の周りのエリアが、ポリネーターに有益な植物を生息させる理想的な場所であることを見出した。そうしたなか、ここ数年、米国では、ポリネーターの生息地を保護するために、「ポリネーターに優しい太陽光発電」の開発が進んできている。

「周辺農家にも役立ちたい」

 今年で、創立100周年を迎えたパーデュー・ファームズでサステナビリティ部の副社長を務めるスティーブ・レビッツカイ氏は、「太陽光パネルを敷き詰めた5エーカー をポリネーターに優しい生息地にすることは、考えるまでもないことでした」と語る。

 さらに同氏は、こう続けた。「現在、ポリネーターの生息が、同社の鶏の育成に重要な成分の1つである大豆、そして様々は果物や野菜の収穫を増やすのに重要な役割を果たすのは多くの研究で立証されています。そのため我々は地球環境問題への貢献だけでなく、本社付近の農家にも役に立とうと考えたのです」

 「従来、太陽光発電の架台の下は、砂利や草で覆われていますが、こうした地表面の管理は、ポリネーターの生息地を新たに作り、維持するコストとほぼ同じなのです。ポリネーターにとって有益なグラウンドを作ることは経済的な障害にはなりません。これらの利点から、我が社では、今後の太陽光発電導入には『ポリネーターに親切な』グラウンドを設ける計画です」――。...Read More Here

July 13, 2020

米住宅太陽光の最新動向、シェアトップ企業がNo.2を買収! 「第3者所有モデル」席捲後、自己所有も復調、設置手法が多様化

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クリーンでレジリエントなエネルギー

 米国の住宅用太陽光発電市場でリーディングカンパニーである米サンラン(Sunrun)は、同じ業界の競争相手であるビビント・ソーラー(Vivint Solar)を買収すると、7月6日発表した。

 サンランは、住宅用太陽光発電と蓄電池のサービスプロバイダーで現在、米住宅太陽光市場でシェアトップを誇る。一方、ビビント・ソーラーは、シェア2位の住宅用太陽光発電フルサービスプロバイダーである。つまり、業界1位と2位の合併ということになる。

 全株式交換による取引で、ビビント・ソーラー株1株に対してサンラン株0.55株を割り当てるというもので、買収総額は、32億ドル。両社の取締役会は全会一致でこの買収を承認しており 、買収手続きは、両社の株主と規制当局の承認などを経て、今年第4四半期(10〜12月)に完了する見通しだ。‘

 「米国はクリーンでレジリエントなエネルギーを求めています。ビビント・ソーラーが加わることにより、家庭用太陽光発電と蓄電池の利点をより高め、より多くの家庭に広められる、ハイクオリティーな営業チャンネルを得ることになります」。サンランの創業者兼最高経営責任者(CEO)リン・ジュリッチ氏は、買収計画発表の場でこう語った(図1)。

図1●サンラン社がNASDAQで株式上場記念(中央黄色いジャケットが同社CEO)
(出所:NASDAQ)
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 この買収により、サンランは、約50万人の顧客と3GWを超える太陽光発電の資産を持つ「リーディングオーナー」にもなるという(図2)。...Read More Here 

June 26, 2020

“100%太陽光“で賄う大規模な分譲住宅地「太陽のシティ」 150MWのメガソーラー と40MWhのエネルギー貯蔵導入

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東京ドーム1558個分 

 米国で「未来のシティ」または「太陽のシティ」と呼ばれる、巨大なスケールの分譲住宅地プロジェクトがフロリダ州南東部で繰り広げられている。その名は「バブコック・ランチ(Babcock Ranch)」で、東京ドーム1558個に匹敵する1万8000エーカーの土地に、牛の放牧地や湖沼、野生生物の生息地など自然環境を保ちながら環境に優しい住宅開発が行われている(図1)。
図1●フロリダ州にある大規模な分譲住宅池「バブコック・ランチ」
 バブコック・ランチが米国で最初の「太陽のシティ」と呼ばれる理由は、街区全ての消費電力をメガソーラー(大規模太陽光発電所)でまかなっている、完全なエネルギー「地産地消型」のプロジェクトであるからだ。
 この街区は、2018年1月に最初の居住者を迎えた。開発を担った米デベロッパーであるキッソン・デベロップメント社の広報担当リサ・ホール氏によると、2020年5月1日時点で、新規マンション販売数は658戸、不動産取引の手続きを完了したマンションは490戸で、合計1225人が「太陽のシティ」で暮らしている。
 分譲住宅地プロジェクトと言っても、バブコック・ランチは、さらに7つの地区に分かれていて、9社のホームビルダーによって下は20万米ドル、上は100万ドル以上の価格帯で新規住宅地が供給されている。20年後、このコミュニティ全体が完成した暁には、合計1万9500戸の住宅、5万人の住人が生活できるように計画されている.

50%を「グリーン空間」に設定

 2006年にキットッソン・アンド・パートナーズ社の会長と最高経営責任者(CEO)を務めるシッド・キットッソン氏は、9万1000エーカーの土地をバブコック家から購入した。その後、9万1000エーカーにうち7万3000エーカーの土地をフロリダ州政府に自然保護地を創設するために売却した。ちなみにこれは、フロリダ州で歴史上最大となる保護用地の購入という。
 キットッソン氏は、「(土地開発において)賢い成長と自然保護が連携できることを証明する」との熱意を持ちつつ、売却した自然保護地に隣接する残りの1万8000エーカーを、持続可能で革新的な新しいコミュニティとして開発するための承認を同州から受けた。Read More Here

June 22, 2020

米アマゾン、615MWのメガソーラーを新規開発 パリ協定を10年早く達成へ、州の気候政策にも影響

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2040年に「ネットゼロ」誓約

 先月、米インターネット通販大手のアマゾン(Amazon)は、同社の「気候変動対策に関する誓約」の取り組みの一環として、世界で新たに5基の大規模太陽光発電(メガソーラー)プロジェクトに着手すると発表した。
 中国に1基、オーストラリアに1基、そして米国に3基で、合計出力は615MW、年間約120万MWhの電力を供給することになっている。
 アマゾンは、昨年9月に「クライメート・プレッジ」と呼ばれる気候変動対策に関する誓約を立てた。それは、同社の世界における全ての事業を、パリ協定の目標期限より10年早い、2040年までに 「ネット・ゼロ・カーボン (温室効果ガスの排出量を正味ゼロ)」を達成する取り組みである。
 さらに、同社は、風力と太陽光発電に投資し、2024年までに同社の全事業で消費するエネルギーの80%を再エネで賄う、さらに2030年までに100%賄うという目標もある。
 メガソーラー以外にも、現時点で、50以上の同社のフルフィルメントセンター(物流施設)には屋根置き太陽光発電が設置されており、施設の電力消費の約80%を賄っている。 
 2019年12月時点で、総出力は110MWを超え、米国内における屋根置き太陽光発電システムの数は37、ヨーロッパでは12、インドでは8となっている。ちなみに、同社は2018年米太陽エネルギー産業協会(SEIA)によって、米企業で最も分散型太陽光発電を導入した企業ナンバー1に挙げられた(図1)。
図1●アマゾン・フルフィルメントセンターに導入された屋根置き太陽光発電
(出所:Amazon

 今回の発表によると、アマゾンは具体的に米国において、オハイオ州に200MWと80MWの2基と、バージニア州に130 MWの1基のメガソーラーを計画している。
 オハイオ州では、2基のメガソーラー が計画されている。オハイオ州南部に建設予定の「ネッスルウッド・ソーラー・ファーム」と呼ばれる80MWのサイトは、昨年同州の公営委員会から許可が出ており、「ヒルクレスト・ソーラー・ファーム」と呼ばれる200MWのサイトは既に建設が始まっているという。

第2本社は「再エネ100%」に

 一方、バージニア州で計画しているメガソーラーは、同社で12基目になるが、詳細はまだ発表されていない。ただ、同社とバージニア州は以前から親密な関係にあり、今回のプロジェクトもこうした流れが背景にある。
 アマゾンは2019年、バージニア州アーリントンを同社の第2本社「HQ2」を置く地に決めた。第1の本社は西海岸北部ワシントン州シアトルに構える。「HQ2」では2万5000人の雇用を創出する予定で、さらに事業に必要なエネルギーを100%再エネで賄うとしている。Read More Here

June 7, 2020

ハワイ「再エネ100%」に向け、「メガソーラー+蓄電池」続々 太陽光急増による需給のミスマッチを解消へ

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3GWh分の蓄電池が落札

 先月、ハワイ電力工業(Hawaiian Electric Industries)は、昨年末に公募した入札の結果、16の「メガソーラー(大規模太陽光発電)+蓄電池」プロジェクトと、太陽光と併設しない「単設(スタンドアローン)」のエネルギー貯蔵プロジェクトを選択した、と発表した。
 今回落札されたプロジェクトの規模は、合計出力460MW(連系出力)の太陽光発電と容量約3GWhの蓄電池で、オハフ、マウイ、そしてハワイ島に導入される。これらのプロジェクトが完成し、稼働を始めると、ハワイ州における太陽光発電の発電量を50%以上増加させることになるという。島別にプロジェクト導入を見てみると以下のようになる(図1)(図2)。
図1●島別のプロジェクト導入容量
(出所:Hawaiian Electric Company, Inc.)
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図2●「メガソーラー+蓄電池」と単設エネルギー貯蔵・16プロジェクトの計画地
(出所:State of Hawaii, Energy Office)
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 ハワイ電力工業は、昨年8月に 900MWの太陽光発電を含む再エネ、500GWhの蓄電池、210MWのグリッドサービス調達の一般競争入札を実施した。この入札はハワイ州のみならず、米国の公益事業委員会による最大規模の入札公募であった。ちなみに、今回の公募では、75件以上の入札参加があり、そのうち16件が採択された。...Read More Here

May 25, 2020

2019年の世界太陽電池市場、シェアトップ5社は? 出荷量は前年比39%増、「単結晶」が主流に

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出荷量は再び増加に転じる

 太陽光発電市場に関するリサーチ・コンサルティング会社である米SPV マーケットリサーチ(SPV Market Research)の最新レポート「ソーラーフレア(Solar Flare)」によると、2019年の全世界における太陽電池出荷量は、結晶シリコン系と薄膜系を合せ、前年比39%増の123.5GWだった。
 ちなみに、2018年の出荷量は、前年比5%減だったので、2019年に供給量は大きく改善され、盛り返したことになる。
 2019年の出荷量のシェアを国別に見てみると、1位は、中国で全世界出荷量の63%を占めた。2位はマレーシアだが、かなり距離を空けて、シェアは約20%だった。
 年間出荷量が10G Wを超えたのは、上位2位の中国とマレーシアだけだった。3位のベトナムは9GWを超えたが、 10GWにはとどかなかった。4位は台湾、5位は韓国となっている。米SPV マーケットリサーチによると、上位5位が2019年の全世界太陽電池出荷量の90%以上を占めた(図1)。
図1●2019年の国別世界太陽電池出荷量シェア(トップ5)(出所:SPV Market Research)

 さらに、2019年の出荷量をメーカー別に見てみよう。

上位10社で6割占める

 1位は、農業や新エネルギーを主力事業とする中国の通威集団傘下のシリコン系太陽電池メーカーである通威太陽能(Tongwei Solar)で、世界シェアは二桁の10%であった。同社がこの市場で首位につくのは初めてで、SPV マーケットリサーチによると、同社の2018年のシェアは5%だったので、1年間でシェアが2倍になったことになる(図2)。...Read More Here

May 14, 2020

米住宅太陽光市場、新型コロナでどんな影響が? レジリエンス向上や光熱費削減で評価する消費者も

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見積もり会社がアンケート調査

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染防止対策とパンデミック(世界的な流行)による景気後退は、多くの産業で企業業績を悪化させている。だが、業種によっては、必ずしも負の側面ばかりではない。住宅太陽光の分野も、そうした業種の1つといえそうだ(図1)。
図1●COVID-19パンデミックによって米経済は大きく停滞している
(出所:ジョンズ・ホプキンズ大学のシステム科学工学センター)
今年5月に入り、「COVID-19時代における(住宅太陽光の)利用者と設置者の意識」と題するアンケート調査の結果を米エネルギーセイジ(EnergySage)がスペシャル版として発表した。
 この調査は、住宅用太陽光発電を導入する予定の消費者と住宅太陽光の施工事業者を対象としている。調査エリアは全米で、COVID-19のパンデミックが米住宅用太陽光市場にどのように影響を与え、消費者と施工者はどのように対応しているか、という点が調査の目的になっている。米エネルギーセイジは、オンラインによる太陽光発電システムの見積もりサービスを提供している会社である。
 この調査では以下の3つ傾向が明らかになった。
(1)COVID-19により、太陽光発電に興味が高まった。
(2)太陽光発電設備の購入・設置を延期、または、既存の契約をキャンセルする顧客はあまり多くはない。
(3)太陽光発電設備の営業がオンラインに移行し、いくつかのメリットが現れ出した。...Read More Here

May 7, 2020

米で急拡大する「ハイブリッド型メガソーラー」、計画中は8GW 蓄電池/太陽光の出力比率は0.6、放電時間は4時間を超える

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太陽光は「ハイブリッド」へ

 米国では現在、連系出力ベースで4.6GWの再生可能エネルギー発電設備が、蓄電池を併設した形で稼働している。こうした蓄電池併設型の再エネ発電設備は「ハイブリッド型」と呼ばれ、そのなかには太陽光発電も含まれる。
 ハイブリッド型の再エネ設備は、さらに14.7GWものプロジェクトが計画されており、なかでも太陽光発電が急増している。
 この分析は、米国エネルギー省(DOE)の研究所の一つであるローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)と、米研究機関のエレクトリック ・パワー・ リサーチ・ インスチテュート(EPRI)によるもので、米「エレクトリシティー・ジャーナル」に研究レポートが掲載されている。
 「基幹電力系統内における蓄電池を併設したハイブリッド発電設備を導入する動機と選択」と題する、このレポートでは、グリッド(系統網)に接続した発電事業用の再エネ発電設備(連系出力1MW以上)に焦点を当て、「ハイブリット」の動向などについて分析している。
 近年、プロジェクトデベロッパーは、蓄電池を太陽光発電と同じ系統連系ポイントに併設する「ハイブリッド」プロジェクトへの関心を高めているという。
 天候などによって出力が大きく変動する太陽光・風力発電などの「出力変動型再エネ」の導入を拡大しグリッドに統合するためには、グリッドシステムの柔軟性をさらに高める戦略が必要である。蓄電池の活用は、グリッドの柔軟性を高め、変動型再エネの大量導入を促す貴重な戦略であることが、動機の1つになっている。太陽光・風力のさらなるコスト削減が進むにつれて、蓄電池の活用はいっそう拡大するとされている。

計画中の「太陽光ハイブリッド」は約8GW

 同レポートによると、現在米国では61の「ハイブリット設備」が運営されている。連系出力では4.6GWになる。電源種別で見ると、現時点では太陽光発電より、風力、天然ガス、石油による発電設備の方が多くなっているが、計画が発表されたプロジェクトを見ると、太陽光発電が他の発電設備を大幅に上回っている。ちなみに、計画されているハイブリッド設備の数は88で、連系出力は14.7GWに達する。
 太陽光発電のみのデータを見てみると、現在稼働済みの太陽光発電・蓄電池のハイブリッド設備は34で、合計連系出力は706MWだが、計画数は75で、合計出力は7.85MWと大きく伸びていることがわかる(図1)。Read More Here

図1●発電設備別・稼働済みと計画中の「ハイブリッドプロジェクト」
(注:単位=GW・連系ベース、左グラフ=稼働済み、右グラフ=計画中、濃い青色=発電設備の出力、薄い青色=蓄電池の出力)(出所:LBNL)

April 27, 2020

新型コロナで軒並みプロジェクト延期、減収・解雇は避けられない? 感染対策が及ぼす、米エネルギー貯蔵産業への影響

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100MWのPPA契約

 CdTe(カドミウムテルル)型化合物系太陽光パネルの供給で世界トップである米メーカーのファースト・ソーラーは、太陽光発電にエネルギー貯蔵を併設したプロジェクトから電力を供給する、15年間に渡る電力購入契約(PPA)を締結したと発表した。
 契約を結んだのは、カリフォルニア州のモントレイベイコミュニティパワー(MBCP)とシリコンバレークリーンエネルギー(SVCE)で、MBCPとSVCEは、カリフォルニア州を代表するコミュニティー・チョイス・アグリゲーター(CCA)である。ちなみに、CCA とは、日本の地域新電力に似た、地方自治体の関与した地域密着型の電力小売事業者で、カリフォルニア州のように大手電力の独占下でも法的に電力事業が認められている。
 このPPAは、カリフォルニア州カーン郡でファースト・ソーラーが開発する連系出力100MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所 )に20MWの大規模エネルギー貯蔵が併設される。このプロジェクトは2022年第2四半期(4~6月)までに完成する予定である。
 新型コロナウイルス(COVID-19)が米国経済に深刻な影響を与えている真只中、ファースト・ソーラーはこのような大規模プロジェクトの開発を継続・進行することができた。
 とはいえ、こうした明るい話題は限定的で、全体として見ればやはり米国のエネルギー貯蔵産業の現況は明るくない。

ビジネスへのインパクトを調査

 新型コロナウイルスの感染拡大に対応した非常事態宣言により、事業活動にも大きな制約が課せれている。米国エネルギー貯蔵協会(ESA)が、4月の2日から11日にかけてコロナウイルスのビジネスにおけるインパクトを調査し、その結果を4月中旬に発表した。
 感染対策の影響が波及するスピードは速く、業界に壊滅的な打撃を与えている可能性があることが明らかになった(図1)。
図1●新型コロナウイルスの影響に関する調査の回答者内わけ(注:オレンジ色=インストーラー・プロジェクトデベロッパー、灰色=メーカー、黄色=サービス、水色=その他、青色=システムオペレーター)(出所:ESA)
 調査は、今年第2四半期(2020年4月から6月)におけるエネルギー貯蔵企業の収益、雇用、そして、プロジェクトに対するCOVID-19の影響を分析することに重点が置かれた。...Read Here More

April 16, 2020

自治体のコロナ対策でリスク回避、米の太陽光建設業 「非接触申請許可」と「遠隔立ち合い検査」を導入

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建設業は「必要不可欠」

 米カリフォルニア州では新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大防止に向け実質的な外出禁止令が3月中旬に発令され、それに伴い非必須(ノンエッセンシャル)事業の停止と従業員の在宅勤務が義務付けとなった。一方、必要不可欠(エッセンシャル)とみなされた社会生活インフラである商業や事業は営業の継続が認められている。連邦政府、さらに多くの州政府は、「建築」をエッセンシャルとみなした。
 建築物の施工や完工には、公的な許認可や検査が必要なものが多く、地方自治体レベルで運営される建設局・建設課が、こうした業務を立ち合いで行ってきた。新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される状況のもと、建築業が円滑に継続されるため、こうした手続きをどのように行い、建築事業者をサポートするかが大きな課題となった。
 これには大きな困難も予想されたが、幸いなことに、課の職員の感染リスクを抑制しながら、設備の安全な設置を保証できる選択肢があるのだ。それは、「非接触(非対面)申請許可」とリアルタイムで行われる「リモート(遠隔)・バーチャル立ち合い検査」である(図1)。
図1●遠隔ビデオによる検査(出所:NFPA)

太陽光の建設には許可と点検

 4月6日、「COVID-19の中、どのように安全な許可・検査を継続するか」と題するセミナーが、サステイナブル・エネルギー・アクション・コミッティ(SEAC)とインタースタイト・リニューアブル・エネルギー・カウンセル(IREC) の共催で行われた。SEACは、ネット・ ゼロエネルギー・コミュニティへの移行を安全かつ効率的にサポートするための情報を提供し、IRECはクリーンエネルギーの普及・推進を目的として1982年に設立された非営利組織である。
 セミナーには主にカリフォルニア州の市役所の建設課で太陽光発電の許可と検査に従事する職員が各局でのCOVID-19前と後の対応方法の違いを語った。
 太陽光発電システムを設置するには電気と建設工事が必要になり、この種の作業には安全性の懸念が伴うため、地方自治体は各太陽光発電が稼働を開始する前に、設置が電気及び建築基準に適応していることを確認する必要がある。
 設置許可申請と点検は官僚的ではあるが、必須なプロセスであり、主に施工業者がサービスの一環として、このプロセスを処理する。...Read More Here

March 31, 2020

米太陽光業界も新型コロナ対策、テスラは「人工呼吸器」生産へ ファーストソーラーはパネル生産を継続、業界団体がガイダンス



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ファーストソーラーは「影響なし」

 米国では大都市の自治体や州政府により、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を防ぐための準備や対策が急ピッチで進んでいる。一般市民、そして企業への積極的な対策、そして対策への参加を求めている。
 3月26日、化合物型太陽光パネルのトップメーカーである米ファーストソーラー(First Solar)が、新型コロナウイルスによるパネル生産への影響について発表した。
 米アリゾナ州に本社を構える同社は、テルル化カドミウム(CdTe)を使った化合物半導体を使った薄膜パネルを開発・製造しており、米オハイオ州ウッド郡、マレーシアのクリム、そしてベトナムホーチミン市で工場を運営している。
 米国ではワシントン州が非常事態宣言を発令したのを皮切りに、市、そして州規模で「外出自粛」「外出禁止」令が発令された。外出禁止令の中、「エッセンシャル・ビジネス」と呼ばれる医療機関、食料品販売などの社会生活を維持する事業や商業に関しては、従来通りビジネスを継続できるが、その他の商業・事業は一時的に店舗・工場を閉鎖するか、オフィスの場合従業員はオンラインによる在宅勤務が求められている。
 同社はオハイオ州のペリスバーグとレイク・タウンシップで工場を持っていて、そのオハイオ州でも、「外出自粛」が発令された。しかし、同社によると、現時点で、ファーストソーラーのオハイオ州の工場は、生産の継続が認められたとしている。ちなみに、ファーストソーラーは、現在、西半球で最大の太陽光パネルの生産規模を有している(図1)。
図1●米ファーストソーラーのオハイオ州にあるパネル工場, Credit First Solar

 オハイオ州と同じように、同社のマレーシア、ベトナムの工場も生産を継続している。
 同社は、2019年第4四半期の投資家向け財務報告の中で、マーク・ウイッドマCEO(最高経営責任者)は、「私たちは、原材料を提供する中国のパートナーを含め、地理的に多様なサプライチェーンを持っているが、現在まで、コロナウイルスの感染拡大による影響をしっかり管理しており、当社の事業に重大な影響はない」と、語った。

テスラは人工呼吸器の生産へ移行

 ニューヨーク州に生産工場を持つ米テスラ(Tesla)は、3月25日に同社の太陽電池セル(発電素子)とパネルの工場を一時的に閉鎖することを発表した。ニューヨークではコロナウイルスの感染者が急増し、人工呼吸器が不足するなどの深刻な事態が起こっている。
 そこで、同社CEOのイーロン・マスク氏は、同社の「テスラ・ギガファクトリー2」と呼ばれるニューヨーク州バッファローの工場で、「人的リソースの可能な限り、早急に人工呼吸器の工場として、生産を再開すると公表した。「ニューヨークの市民を助けるために、持てる力であらゆることに取り組む」とツイッターを通して発表した。...Read More Here