April 23, 2018

近道をしない「RE100」達成への道(前半) 「環境価値」に頼らず、再エネ新設と化石発電の廃止に貢献

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 米アップルは4月9日、同グループの全世界の事業運営で消費する電力に関し、再生可能エネルギー100%を達成したと発表した。

各地域で再エネ投資を拡大

 同社の凄さは、「RE100」(再エネ100%)を「目標」とする企業がようやく増える中、すでに自国内でのRE100を達成し、同社本社のある米国だけでなく、43カ国にわたるグローバルレベルで達成したことだ。
 この達成にあたり同社は、環境価値を外部から購入するのではなく、同社の拠点がある地域で太陽光発電所などの再エネ発電設備を建設し、そこからの電力を直接調達するなど、再エネ投資を拡大させた(図1)。
図1●アップルがアリゾナ州に持つデータセンター向けに設置されたメガソーラー(連系出力50 MW)( 出所:アップル)
 RE100を達成するには、(1)自社の敷地内に再エネ発電設備を導入し、発電分を自家消費にあてる(オンサイト発電)、(2)電力会社から「グリーン電力」プランの電力を購入する、(3) 再エネ発電事業者(独立発電事業者など)とPPA(電力購入契約)を結んで電力を調達する、(4)環境価値(グリーン証書など)を購入するーーなどの方法がある。
 RE100を目標とする企業は、これらの方法を組み合わせて達成することが多かった。
 しかし、最近では、環境負荷低減に貢献する「真のRE100達成」とは、「顧客の拠点があって電力需要のある現場、または顧客の拠点が電力供給を受けている送配電網と同じ系統に接続している再エネ設備からの電力調達」、「再エネの新増設への投資促進」、「グリーン電力から『環境価値』と『電力』を一括調達すること」などと見られている。これにより、既存の化石燃料による火力発電所の新増設を抑制する効果があることが評価される。

「環境価値」購入だけでは再エネは増えない

 これに対し、「環境価値の購入だけでRE100を達成する方法は、新規の再エネ投資を創出しない」と、国際的な環境保護団体であるグリーンピースは主張している。
 再エネ設備などからのクリーンな電力は、「電気そのものの価値」とCO2排出削減などの「環境価値」の二つからなる。電気そのものと切り離された環境価値を購入することで、購入者は、「再エネ電力を使用している」とみなされる。
 米国では、環境価値と電力の価値を一括して購入することを「バンドル」、環境価値のみを買うことを「アンバンドル」と表現する。
 米国では各州で発電事業者、または電力小売事業者に対して、電力販売量の一定割合を再エネから供給することを義務付けるRPS(Renewable portfolio standard:再生可能エネルギーポートフォリオ基準)が導入されている。発電事業者や小売事業者は、義務量を達成するために、RPSで認められた環境価値であるREC(Renewable Energy Certificate:再生可能エネルギー証書)を購入するケースが増え、その取引が活発化した。
 最近では、再エネの拡大と共に、コスト削減が進み、導入が加速した。その結果、取引される環境価値の量が急増し、供給過剰となっている。企業がこれらの「余った」環境価値を購入することでRE100を達成しても再エネの新増設につながらず、化石燃料を使った既存の発電所を減らす契機にもならない、という批判が高まってきたのである。..Read More Here

April 10, 2018

米で「太陽光+蓄電池」サミット、見えてきた「使いこなし」への課題 複雑さ増すビジネス、顧客価値の評価と提供が鍵に

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「スイス・アーミーナイフのよう」

 北米エネルギー貯蔵協会(ESNA)が主催するエネルギーストレージ関連のイベント「ソーラー・プラス・ストーレージ(太陽光発電とエネルギー貯蔵)サミット」が3月27日にカリフォルニア州サンディエゴ市で開催された。
 今回議論の焦点となったのは、太陽光発電システムとエネルギー・ストレージ・システムをいかに併設して統合するか、である。住宅、非住宅、発電事業用のセグメントごとに、併設・統合に伴う課題や解決策が活発に議論された。
 近年米国のエネルギー業界では、「エネルギーストレージはスイス・アーミーナイフのようだ」とよく言われる。
 電力の需給バランス、電力系統の安定化、ピークカット、ピークシフト、バックアップ電源、調整火力の代替など、多くの機能やメリットを持つからだ。発電、送電、配電、需要家と電力システムのすべてのバリューチェーンで有効性を発揮する。しかし、用途ごとに、その価値を評価し、活用するにあたっては難しい課題を抱えている(図1)。
図1●米サンディエゴで開かれた「ソーラー・プラス・ストーレージ・サミット」
(出所: ESNA)
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EV普及でコストダウンの恩恵

 ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)でエネルギー・ストレージ・アナリストを務めるローガン・ゴルディースコット氏は講演で、「系統レベルのエネルギーストレージ市場は拡大しているが、依然として小さい」と指摘した。
 BNEFの最新のレポートによると、2017年の世界エネルギーストレージ市場は1.17GWに達し、2030年には2016年比で6倍の規模になると予測している。
 ゴルディースコット氏が強調したのは、蓄電池メーカーが電気自動車(EV)の需要を満たすために投資を加速し、生産規模を拡大している点である。これにより、エネルギーストレージ業界にとってもコストダウンという恩恵をもたらす。
 BNEFの調査によると、発電所に併設するタイプのエネルギーストレージの世界市場は、2017年に700MWをわずかに超えた程度である。しかし、ゴルディースコット氏は、「莫大な数のパイプライン(計画・開発中のプロジェクト)があり、今後2〜3年には大きく成長する」と見る。
 さらに、同氏によると、既設のエネルギーストレージ施設は、太陽光発電システムと併設するタイプは少なく、単独で設置されて周波数調整市場など向けに使われるケースが多い。太陽光発電とエネルギーストレージは「相補的」な関係にあるため、今後は両者の併設が進むと予測する。しかし同氏は、エネルギーストレージ市場を将来的に順調に拡大させるためには, 政府による最適な政策が必要だとも言う。Read More Here
図2●ESNA主催の「ソーラー・プラス・ストーレージ・サミット」における議論の様子
(出所:J. Movellan)

April 2, 2018

米銀行、初めて太陽光発電だけで「RE100」を達成 電力購入契約による再エネ調達が拡大

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130社を超えた「RE100」

 事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる国際イニシアチブ「RE100(再エネ100%)」に加盟する企業がこれまでに130社を超え、世界的に広がりを見せている。
 アップル、ゴールドマンサックス、グーグル、マイクロソフト、ナイキ、スターバックス、ウォルマートなどの米国企業が全体の30%以上を占め、世界のRE100活動をリードする。
  日本企業でもリコーを皮切りに、積水ハウス、アスクル、大和ハウス工業、ワタミ、イオンがR100に加盟した(関連記事)。
 RE100に加盟した企業はさまざまな方法で再エネを調達するが、太陽光発電のみでRE100を達成する企業も出てきた。米フィフスサード(Fifth Third) 銀行は、事業活動で消費する全ての電力を1基のメガソーラー(大規模太陽光発電所)から調達するために、発電事業者と電力購入契約(PPA)を結んだと発表した(図1)。
図1●フィフスサード 銀行はメガソーラーで「再エネ100%」達成
(出所:Fifth Third)
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1つのプロジェクトで「再エネ100%」

 フィフスサード銀行は、一つのプロジェクトから100%再エネを調達する企業として、フォーチュン500企業(米フォーチュン誌が年1回編集・発行する、総収入に基づいた全米上位500社のランキング)の中で初めての企業となった。
 さらに、太陽光発電のみで100%の消費電力をまかなうと公約した企業として、金融機関、および株式上場企業の中で初めての企業となった。
 フィフスサード銀行がPPAを結んだ発電事業者は、ノースカロライナ州を拠点に持つ米国でトップ5の太陽光発電デベロッパーである米サンエネルギー1 (SunEnergy1)である。
 サンエネルギー1 は 、ノースカロライナ州に2億ドルを投入し、出力80MWのメガソーラーを設計、建設、所有する計画である。フィフスサード銀行向けのメガソーラーの年間発電量は約194GWhで、一般家庭2万2000軒分 の平均年間電力消費量に相当する。同メガソーラーは今年後半期に完成予定である...Read More Here