September 7, 2020

太陽光の大量導入を支える「古いテクノロジー」!? 「揚水式水力」が長周期のエネルギー貯蔵として再評価(前半

 Published at Nikkei Mega Solar Buziness

長周期」の調整力不足が露呈

 このコラムの前回記事(米加州で大停電!、再エネ導入で前進も系統の安定運用が後手に)で、米カリフォルニア州が「温室効果ガス(GHG) 排出フリー電源システム(ゼロ・エミッション)への移行」を達成するため、太陽光発電の導入拡大と化石燃料による火力発電所の廃止を同時に進めるが故に、系統運営に問題が生じている実態を取り上げた。

 一方、昼間に太陽光発電からの電力を充電し、夕方のピーク時に放電できるリチウムイオン電池がメインとなるエネルギー貯蔵テクノロジーが、天然ガス火力の代替に再エネを増やしていく上で重要な役割を果たす、という方向性をこれまでのコラム記事で再三、触れてきた。

 住宅用蓄電池、さらに発電事業用のリチウムイオン電池と言えば、米国の著名起業家で、話題に事欠かないイーロン・マスク氏の創業した企業「テスラ」がまず頭に浮かぶであろう。

 テスラの住宅用蓄電池「パワーウオール」、発電事業用蓄電池「パワーパック」は、革新的な蓄電テクノロジーとして、人をワクワクさせ、市場を斬新に変え、大きなシェアを占めることが期待されるものだ。

 しかし、今回、カリフォルニア州で起きた大規模停電で、重要性が評価されたのは、こうした新タイプの蓄電テクノロジーばかりではない。大停電で、明らかになった課題の1つは、長時間での需給バランスの改善に効果のある「長周期エネルギー貯蔵」の必要性である。こうした長周期エネルギー貯蔵テクノロジーで最も活用されているのは、実は「古いテクノロジー」である揚水式水力発電である(図1)。

図1●米加州で最大規模の揚水式水力発電 (1212MW) が導入されているウイスホン湖
(出所:California Energy Commission)


蓄電池の貢献は「ゼロ」!?

 米国でエネルギー貯蔵市場が立ち上がった当初は、調整力市場を通じて、短時間の充放電で生み出した調整力を系統運用事業者に提供する「アンシラリーサービス」がメインで、同サービス用には、「短周期」向け需給改善システムが活用された。

 近年では、カリフォルニア州やニューヨーク州など多くの州政府がエネルギー貯蔵設備の導入を義務化し、 昼間に太陽光発電からの電力を充電し、夕方のピーク時に放電する「シフト目的」の長周期対策での使用が拡大している。しかし、昼間から夕方以上のもっと長期の時間、または数日をカバーできるエネルギー貯蔵が注目され始めた。... Read More Here