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September 17, 2020

太陽光への出力抑制率が12%に、季節を超えた貯蔵に期待 「揚水式水力」が長周期のエネルギー貯蔵として再評価(後半)

Published at Nikkei Technology Mega Solar Business

「古いものが新しい」

 米国水力発電協会(National Hydropower Association:NHA)は、「全ての古いものが、また新しい」と、水力発電のカムバックを表している。その意味するところは、 発電源としてだけでなく、水力を「貯蔵」として捉えている。揚水式貯蔵は、米国で最も大規模で、最も古いエネルギー貯蔵テクノロジーなのだ。

 ちなみに、日本の電気事業連合会によると、揚水式水力発電は、「発電所の上部と下部に大きな池(調整池)をつくり、電力需要の多いときは上の調整池から下の調整池に水を落として発電し、発電に使った水は下部の調整池に貯めておく 」となっている。さらに、「日本では特に夏の昼間にはエアコン、屋内照明などに最も多くの電力が必要とされている。一方で、夜は逆に電力消費が少なくなる。そこで、電力需要の少ない夜間に火力・原子力発電所の電力を利用して、揚水発電下部の貯水池から上部の貯水池まで発電用水を汲み上げ、再び昼間の発電に使う」と、解説されている。

 米カリフォルニア州では、「温室効果ガス(GHG) 排出フリー電源システム(ゼロ・エミッション)への移行」を達成するため、太陽光発電の導入拡大と化石燃料による火力発電所の廃止を同時に進めている。そんな、同州にあっては揚水式貯蔵の位置づけが日本と違う(図1)。

図1●カリフォルニア州にある揚水式貯蔵の1つ(出所:The Walsh Group)

太陽光で昼間に水を組み揚げ

 電力の供給が高い太陽が照っている時に、下部調整池に貯まった水を上部調整池にくみ揚げ、電力需要の高い太陽が沈んだ後に、上部調整池にためられた水を下部調整池に放水し、電力を供給する。

 昼間の太陽光発電による余剰電力を活用して、水を組み揚げ、夕方の電力ピーク時に水を落として発電する。この活用方法により従来の蓄電池とは比較にならない量の電力を貯蔵することかができ、さらに、夜間の火力発電や原子力発電の削減にも繋がり、真のGHG排出フリー電源システムが形成できる。

 このモデルが現在成り立つのは、太陽光発電導入拡大により、太陽光発電の供給と実際の電力需要のミスマッチが起こっているからだ。カリフォルニア州では、需要ピークは太陽光の出力が減少する夕方から夜になる。需要の小さい昼間に大量に発電する太陽光発電は、過剰供給を起こし、出力抑制の対象となってしまう。昼間の太陽光発電の出力を抑制すると同時に、夕方にかけて急に立ち上がるピーク需要を満たすため、化石燃料による火力発電を稼働させると、 本来の意図と反対にGHGの排出量を高めることになる。 ...Read More Here

August 25, 2020

米加州で大停電!、再エネ導入で前進も系統の安定運用が後手に 「世界5位の経済大国」でも、電力網は発展途上国以下!?

 Published at Nikkei Mega Solar Business

「革新的な州にとって容認できない」

 依然として、世界を脅かす新型コロナウイルスで自粛ムードが続く中、米国では8月中旬に突然、猛暑が訪れた。とはいえ、夏なのだから当たりのことにも思える。

 そんななか、世界をリードするハイテク企業が集まるシリコンバレー、世界を魅了するエンターテイメントが生まれるハリウッドなど、世界の先端を走るカリフォルニア 州で、何と電気の供給不足で、停電に陥ってしまったのだ。

 カリフォルニア州を1つの国だとすれば、その経済規模は英国を上回り、米中日独に次ぐ世界5位に相当する。そんな先進経済大国で、猛暑によって停電が起きた背景には、どんな事情があったのか。電力系統は、途上国並みということなのだろうか。

 同州のギャビン・ニューサム知事は今回の停電を「国の最大かつ最も革新的な州にとって容認できない、不適合」と表現した(図1)。


図1●電力の専門家と今回の電力不足の緊急会議を行うカリフォルニア州知事(黄緑色の囲み内)
(出所:Office of Governor Gavin Newsom)


 国内のメディアでは、不十分な電力供給のために同州が計画停電を実施することは、2001年のエネルギー危機以来、ほぼ20年ぶりと報道されている。だが、実際には、「停電」に関して言えば、もっと頻繁に起こっている。

停電すると自家発電機がうなり声

 筆者はサンフランシスコから南に車で約1時間の、空高くそびえ立つ赤スギで有名な州立公園近くに住むが、ここ数年間で何回停電に見舞われたか、とても数え切れない。

 強風が吹くと停電。雨が続くと停電。乾燥が続くと停電、と言った具合だ。

 特に、強風と乾燥が重なった場合、老朽化して整備の不十分な送電線が火元になり大規模な山火事を起きるのを防ぐため、数百万人の電力を停止するという意図的な停電も起こる(図2

 こんなに脆い電力網を持つのは、米国内のみならず、世界でもトップ規模の大手電力会社パシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)なのである。こんな状態であるから、地域の住民のほとんどは自前のジェネレーター(自家発電機)を持っており、停電とわかると、各自外に出て、ジェネレーターをブルンブルンと稼働させるのである。停電が2時間続くのか、2日以上になるのかも分からない、全く発展途上国のような生活になる。

「複数の災厄」で破滅的に

 問題の停電は8月14日の夕方に始まった。

 カリフォルニア州の送電系統を管理するカリフォルニア独立系統運用機関(CAISO)は、停電後、初めての公的な声明で、今回のイベント(停電)を「パーフェクト・ストーム」と表現した。これは、「複数の災厄が同時に起こり、破滅的な事態に至ること」を意味する。Read More Here

May 7, 2020

米で急拡大する「ハイブリッド型メガソーラー」、計画中は8GW 蓄電池/太陽光の出力比率は0.6、放電時間は4時間を超える

Published at Nikkei Mega Solar Business ---

太陽光は「ハイブリッド」へ

 米国では現在、連系出力ベースで4.6GWの再生可能エネルギー発電設備が、蓄電池を併設した形で稼働している。こうした蓄電池併設型の再エネ発電設備は「ハイブリッド型」と呼ばれ、そのなかには太陽光発電も含まれる。
 ハイブリッド型の再エネ設備は、さらに14.7GWものプロジェクトが計画されており、なかでも太陽光発電が急増している。
 この分析は、米国エネルギー省(DOE)の研究所の一つであるローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)と、米研究機関のエレクトリック ・パワー・ リサーチ・ インスチテュート(EPRI)によるもので、米「エレクトリシティー・ジャーナル」に研究レポートが掲載されている。
 「基幹電力系統内における蓄電池を併設したハイブリッド発電設備を導入する動機と選択」と題する、このレポートでは、グリッド(系統網)に接続した発電事業用の再エネ発電設備(連系出力1MW以上)に焦点を当て、「ハイブリット」の動向などについて分析している。
 近年、プロジェクトデベロッパーは、蓄電池を太陽光発電と同じ系統連系ポイントに併設する「ハイブリッド」プロジェクトへの関心を高めているという。
 天候などによって出力が大きく変動する太陽光・風力発電などの「出力変動型再エネ」の導入を拡大しグリッドに統合するためには、グリッドシステムの柔軟性をさらに高める戦略が必要である。蓄電池の活用は、グリッドの柔軟性を高め、変動型再エネの大量導入を促す貴重な戦略であることが、動機の1つになっている。太陽光・風力のさらなるコスト削減が進むにつれて、蓄電池の活用はいっそう拡大するとされている。

計画中の「太陽光ハイブリッド」は約8GW

 同レポートによると、現在米国では61の「ハイブリット設備」が運営されている。連系出力では4.6GWになる。電源種別で見ると、現時点では太陽光発電より、風力、天然ガス、石油による発電設備の方が多くなっているが、計画が発表されたプロジェクトを見ると、太陽光発電が他の発電設備を大幅に上回っている。ちなみに、計画されているハイブリッド設備の数は88で、連系出力は14.7GWに達する。
 太陽光発電のみのデータを見てみると、現在稼働済みの太陽光発電・蓄電池のハイブリッド設備は34で、合計連系出力は706MWだが、計画数は75で、合計出力は7.85MWと大きく伸びていることがわかる(図1)。Read More Here

図1●発電設備別・稼働済みと計画中の「ハイブリッドプロジェクト」
(注:単位=GW・連系ベース、左グラフ=稼働済み、右グラフ=計画中、濃い青色=発電設備の出力、薄い青色=蓄電池の出力)(出所:LBNL)

September 18, 2018

米で検討の再エネ新政策「クリーン・パワー・スタンダード」、ダックカーブを改善 RPSを発展させ、需要ピーク時の「再エネ容量」確保を義務付け

Published at Nikkei Technology ---  これまで米国の太陽光発電を含めた再生可能エネルギー導入の主要な牽引役はRPS(再生可能エネルギー・ポートフォリオ基準=Renewable Portfolio Standard)だった。

「再エネ100%」と言うものの…

 RPSは、全ての電気事業者または電力小売事業者に対して、電力販売量の一定割合を再エネから供給することを義務付ける制度である。RPSは州レベルで法律化され、現在29州とワシントンDCで実施されている。

 さらなる「低炭素化」または「脱炭素化」を目指し、多くの州でRPSの義務量を引き上げている。実際、ハワイ州では既に「再エネ100%」が成立しており、カリフォルニア州でもハワイ州に続き、「100%法案」が9月10日に可決されたばかりである(図1)。

図1●「100%法案」への支持を表明する
アーノルド・シュワルツェネッガー前カリフォルニア州知事
(出所:California State Archive/Peter Grigsby)


 しかし一方で、義務量を今後、さらに増やし続けても、相対的で効率的な温室効果ガス(GHG)排出量の削減に繋がらない、という分析結果が公表された。

 その背景には太陽光発電の大量導入で生じた電力の需要と供給のミスマッチと、拡大するピーク需要がある。

 2014年のカリフォルニア独立系統運用機関(CAISO)による分析によると、カリフォルニア州のRPS導入目標を2024年に33%から40%に引き上げた場合、再エネ導入量は7%増加するものの、GHG削減量は2%にとどまるという結果となった。...Read More Here

August 8, 2018

米加州で「住宅太陽光の設置義務」、その真意は? 「ダックカーブ」で変化するグリッドのニーズにも対応

Published at Nikkei Technology ---

ホームビルダーと協業

 8月に入り、住宅用太陽光発電システムの販売・施工を行う米ビビント・ソーラー社が、米カリフォルニア州の新築住宅市場向けに、米国最大級のホームビルダーの1社と協業すると発表した。これは同州が今春、公表した「新築住宅への太陽光発電設置義務付け」に備えた取り組みである(図1)。
図1●住宅に太陽光発電を設置するビビント社の施工者
(出所:Vivint Solar Developer, LLC)
 今年5月にカリフォルニア・エネルギー委員会(CEC)は、2020年1月より新築住宅に太陽光発電を導入する新しい規制を承認した。これは全米で初めての州政府による「新築住宅への太陽光発電設置の義務化」となる。
 カリフォルニア州の公表データによると、現在同州では年間およそ15万軒の新築・既存住宅に太陽光発電が設置されており、そのうち約10%の1万5000軒が新築住宅用となっている。 同州では年間平均8万軒の新築住宅が建てられるので、 2020年以降、全ての新築住宅に太陽光が設置されるとなると、現在に比べて新築向け市場が約5倍に拡大する(図2)。
図2●カリフォルニア州の住宅用太陽光発電導入推移
(出所:California Distributed Generation Statistics)

さらなる省エネも促す

 今回の「太陽光発電設置義務」の対象は、具体的に新築戸建、3階建までの低層集合住宅(アパート等)になり、2020年1月1日から施行される。太陽光発電の設置に加え、住宅の壁、窓などの高断熱機能を高め、高効率の省エネ設備機器の搭載など、さらなる省エネを求める基準も含まれている。
 さらに、新築住宅が高い建物の陰になっているなど、太陽光発電に適切でない場合、コミュニティーソーラーの開発と蓄電池の併設などの代替手法も含まれている。
 太陽光発電の義務付けは、同州の掲げる「ゼロ・ネット・エネルギー (ZNE)」目標を達成するための一手段と言われている。カリフォルニア州は、新築住宅用建物は2020年まで、そして新築商業用建物は2030年までにZNEにするという目標を2008年に成立させた。
 ZNEは住宅を含む建築物の断熱性・省エネ機能を改善させ、太陽光発電などでエネルギーを創ることにより、年間の消費エネルギー量(冷暖房・給湯・照明など)の収支をプラスマイナス「ゼロ」にすることを指す。
 さらに、カリフォルニア州では、建築物における電力、天然ガスなどのエネルギー消費削減を促すために、「タイトル24」と呼ばれるエネルギー効率(省エネ)基準が導入されている。この建物に対する省エネ基準は3年ごとに調整・更新される。今回の新築住宅への太陽光発電導入義務は「2019年建築物省エネ基準」に含まれた。
 今回の基準 は、太陽光発電設置の他に、蓄電池やヒートポンプ給湯機などの需要応答(デマンドレスポンス)技術を奨励し、屋根裏や壁、窓を通じて熱が逃げるのを抑えるための高性能断熱材、高性能なエアフィルター、さらにキッチンの換気システムを改善などが含まれる。... Read More Here

July 26, 2018

EVで「ダックカーブ」解消、系統蓄電池への投資を回避 双方向制御で日中の太陽光発電を充電し、夕方ピーク時に放電

Published at Nikkei Technology --- 気候変動対策で米国をリードするカリフォルニア州は、太陽光発電、エネルギー貯蔵、そして電気自動車(EV)の導入量において、ダントツのナンバーワンである。

EVが系統蓄電池を代替

 同州は、2020年までに再生可能エネルギーによる電力の供給割合を33%、そして2030年までに50%にする目標を設定している。電力系統の信頼性を保ち、さらに多くの再エネを導入するため、同州は民間電力会社3社に、2024年末までに合計1.3GWのエネルギー貯蔵用蓄電池の設置を義務付けた。さらに、2025年までに150万台のゼロ・エミッションカー(ZEV)の導入も法律化している。
 米エネルギー省(DOE)の主管する米ローレンス・バークレー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory:LBNL)の研究者が、「クリーンな電力網の実現を可能にするクリーン車」という分析レポートを発表した。このレポートでは、「EVは、カリフォルニア州の再エネ目標をサポートする一方、定置型蓄電池の導入にかかる多額な投資を回避できる」と分析している。
 EVが運輸部門の脱炭素化に貢献するだけでなく、再エネを電力系統に統合するための資本コストも下げられる、つまり、定置型蓄電池よりEVの方がより低コストで「ダックカーブ」問題を解決できることを示している。
 同州はさらなる温室効果ガス削減のために、太陽光発電の導入拡大を目指すが、「ダックカーブ」問題に直面している。
 「ダックカーブ」とは太陽光発電導入の拡大に伴い、日中には電力供給が過剰となる一方、夕方の需要ピーク時には電力供給が不足する、という問題である。電力需要から太陽光発電などの変動型エネルギー源の供給を差し引いたものを「実質需要」と呼ぶ。分析によると、この実質需要を時間ごとに追っていくと、4つの問題点が見える(図1)。
図1●カリフォルニア独立系統運用機関(CAISO)のダックカーブをもとに4点の問題点を表示
(出所:Jonathan Coignard el al 2018 Environ. Res. Lett.)

「過剰発電」と「ランプアップ」が厳しい課題

 まず、午前中に「ランプダウン(急な実質需用量の低下)」に直面する。これは、太陽光発電の出力が急激に増加する時である(Ramp min)。
 次に日中「過剰発電(日中の低い実質需要)」が発生する。これは、需要が低い日中に太陽光発電の出力が最高(MAX)に達することで、供給過剰になることで生じる。その場合、コスト的に効率的な方法ではないが、大規模なベースロード発電所の出力を絞っていくか、再エネの導入量を拡大する目標に反して、太陽光発電の出力を抑制しなくてはならない (P min)。...Read More Here

March 15, 2018

米エネルギーストレージ市場が「1GWh」越え 太陽光の自家消費向け市場が成長を牽引

Published at Nikkei Tech:

「ビハインド・ザ・メーター」が増加

 米国市場におけるクリーンエネルギーの調査・コンサルティング事業を手掛けるGTMリサーチ(GTM Research)と米エネルギー貯蔵協会(Energy Storage Association: ESA)は、2013~17年の5年間で系統連系型のエネルギーストレージ設備の累積導入容量が1000MWh(1GWh)を超えた、と発表した。
 2017年単年には全米で431MWhの系統連系型エネルギーストレージ設備が導入され、同年第4四半期(9〜12月)には100MWhが導入された。
 GTMリサーチの予測によると、2018年単年で1233MWh(1.233GWh)の系統連系型エネルギーストレージが導入され、今年だけで2017年までの累積導入容量を超えることになる(図1)。
図1●米エネルギーストレージ市場予測(MWh)(濃青:住宅用、青:非住宅用、薄青:電力供給側用)
(出所:GTM/ESA)
[画像のクリックで拡大表示]
 2017年の米エネルギーストレージ市場は前2016年比で27%拡大したが、特に成長した分野は、「ビハインド・ザ・メーター(Behind the meter)」と呼ばれる需要家サイドに設置される蓄電池で、2016年比で79%増加した。これらの蓄電池は主に分散型太陽光と併設され、太陽光発電の余剰を系統網に流さずに貯蔵して自家消費する。

「フロント・オブ・ザ・メーター」は減少

 「ビハインド・ザ・メーター」に対して、主に電力会社などの電力系統側に設置された蓄電池を「フロント・オブ・ザ・メーター (Front of the Meter)」と呼ぶ。フロント・オブ・ザ・メーターとしての蓄電池は、2017年に総導入量の65%を占めるものの、2016年と比べると構成比率は14%減となった(図2)。
図2●米国エネルギーストレージ市場2016/2017比較
(出所:GTM/ESA)
[画像のクリックで拡大表示]
 今回の発表によると、フロント・オブ・ザ・メーター市場では平均放電時間が長い蓄電池の導入が増えている。これは、長周期対策向けの蓄電池市場が成長していることを意味している。
 蓄電池の性能は、瞬時にどれだけの電力を流せるかを表す瞬時最大電力である「出力(単位:W)」と、どれだけの電気を充電または放電できるかを示す「容量(単位:Wh)」の2つがあり、用途によってどちらを重視するかが異なってくる。

PJM管内ではアンシラリー向け急増

 米エネルギー省・エネルギー情報局(Energy Information Administration:EIA)によると、2016年に米国に導入されたフロント・オブ・ザ・メーター向けの大型蓄電池は、地域によって用途が異なり、重視する性能も違ってくる。..Read More Here

October 24, 2017

米加州、太陽光普及で電気料金は「昼が安く、夜に高い」に ピーク時間帯を「16~21時」に変更、太陽光の「電力価値」が低下

Published at Nikkei Technology Online ---  太陽光発電の導入量が全米で1位のカリフォルニア州で電気料金メニューに大きな変化が起ころうとしている。
 カリフォルニア州南部に位置するサンディエゴでは、住宅用太陽光発電システムの所有者向け料金メニューが、昨年から、季節別・時間帯別電気料金(TOU)に移行した。

新TOUでピーク時間帯が昼から夕方に移行

 この際のTOUのピーク時間帯設定では、昼間の電力を高く売れたため太陽光発電システムの所有者にとってはメリットがあったが、サンディエゴで電力・ガスの独占販売をするサンディエゴ・ガス&エレクトリック(SDG&E)社は、2017年12月1日から新TOUでのピーク時間帯を夕方に移行する。
 SDG&E社の現在の夏季ピーク時間帯は午前11時から午後6時までだが、今年8月にカリフォルニア州公益事業局(CPUC)は、同電力会社の夏季ピーク時間帯を午後4時から夜9時に移行する申請に承認した(図1)。
図1●SDG&E社のピーク時間帯シフト
(上:現在の時間帯別料金、下:今年12月からの時間帯料金)
(出所:SDG&E社)

「ダックカーブ」の緩和に役立つ

 CPUCによると、TOUは、ピーク時間帯の消費量の一部を電気料金の安いオフピークの時間帯にシフトするインセンティブを電力消費者に与える手段で、長い目で見ると、時間帯別料金の実施は系統網の安定化と、より低い電気料金を消費者にもたらす、としている。
 新しいTOUは、電気料金を電力コストとより緊密に合わせ、カリフォルニア州で深刻化しつつある需要カーブの急激な増減現象である「ダックカーブ」を緩和するのに役立つ、というのが電力会社側の主張である。...Read More Here

October 13, 2017

Time-of-Use Rates Will Turn the Tables for Energy Storage

Published at Renewable Energy World --- It is not always good to be first. Last June, San Diego Gas & Electric (SDG&E) was the first utility in California to hit its net-metering cap and move to Net Energy Metering 2.0 (NEM 2.0). Now, SDG&E will again be the first utility to start the shift to time-of-use (TOU) period, effective on Dec. 1, 2017.
Under California Public Utilities Commission (CPUC) approval on August 24, SDG&E will shift its summer peak time to 4 p.m. to 9 p.m. from the current 11 a.m. to 6 p.m.
The new TOU periods are supposed to help align rates more closely with the cost of service as well as help mitigate the infamous Duck Curve. According to the CPUC, the implementation of TOU rates should provide customers with the incentives to shift some of their peak usage to off-peak times of day when it will be cheaper to do so. This should result in a more efficient grid and lower bills in the long run.
Will solar customers be able to lower bills too?
Moving from “Buy Low, Sell High” to “Buy High, Sell Low”
As part of the transition to NEM 2.0, solar customers are moved from a tiered-rate structure to a TOU rate structure. At that time, some regarded TOU rates as opportunities since customers get compensated higher credits during solar peak production....Read More here

May 15, 2017

米加州、予算を大幅に増加し蓄電池を推進 放電時間と容量で補助率を変動する新手法、需給バランスに活用

Published at Nikkei Technology Online --- 蓄電池向けの予算を増額

 米国カリフォルニア州は2017~19年の3年間に5億6669万ドルの予算を投じ、コージェネレーション(熱電併給)システム、風力、蓄電池、そして燃料電池などの導入を拡大する。

この予算が組まれているのは、セルフ・ジェネレーション・インセンティブ・プログラム(SPIG:自家発電補助金プログラム)で、2010年にカリフォルニア州の温室効果ガス排出の削減とグリッド(系統網)の安定化を促すために開始した。

 今回は蓄電池への予算が拡大され、総予算の79%の4億4819万ドルが蓄電池に充てられる。うち3億9081万ドルは出力10kW以上の大型蓄電池、残りの5738万ドルは出力10kW未満の小規模・住宅用蓄電池に充てられている。

 5月1日に予約申請の公募を開始した。実は、前回の公募ではプログラム開始と同時に蓄電池用の予算枠が少数の施工業者・メーカーによって、非住宅蓄電池用に抑えられてしまった。その反省から、今回はより多くの家庭や企業に蓄電池が広まように、制度上、いくつか改善している。

 まず今回は、住宅用に予算が割り当てられ、1社の施工業者が申請できる件数にも上限をもうけた。さらに、補助金が5段階(ステップ)に分かれており、予約申請の合計額が予算に達すると補助金が下がる(ステップダウン)仕組みになっている。

 具体的には、ステップ予算に達するたびに補助金額は0.05ドル/Wh下がるようになっている。しかし、もしプログラム開始10日以内に予算に達した場合、2倍の0.10ドル/Whで下がる。つまり、需要が高ければ、補助金額の下がりかたに加速がつき、資金効率を高めている(表1・2)。
表2●加州SGIP蓄電池用補助金(ドル/Wh)ステップ別


グリッド安定化に貢献する電池を優先

 今回は、「Investment Tax Credit(ITC)」と呼ばれる連邦政府からの「再生可能エネルギー導入投資税控除(システム設置にかかった投資額の30%を税額控除)」を利用する場合、大型蓄電池用に限り、補助金額が0.04ドル/Wh低く設定されている。

 さらに、前回は少数のメーカーまたは施工会社などによって、プログラム開始と同時に補助金予算枠が押さえられてしまったので、今回は、もし1日で応募が予算を超えた場合、「抽選」制度が使用される。温室効果ガス排出の削減量、またはグリッド(系統網)への利点が多いプロジェクトは優先権が得られる。... Read More Here

April 23, 2017

米加州、 太陽光と「恵みの雨」で、卸電力価格「0ドル」下回る 水力発電の増加で余剰電力が生じ「ネガティブプライス」に

Published at Nikkei Technology Online --- 電源構成の4割がメガソーラー

 米国カリフォルニア州は、長期間にわたり干ばつに悩まされてきた。だが、一転して昨年末から豪雨と降雪が続き、記録的な降水量となっている。大雨と春先の雪解け水が今まで枯渇していたダムに流れ込み始めた。ダムの貯水量は満タン状態を超え、放水する大量の水で州内の水力発電がフル稼働となっている。

 本来なら、「恵みの雨」に、もろ手を挙げて喜ぶところなのだろうが、太陽光発電事業者にとっては、ちょっと状況が違う。

 今年3月11日、カリフォルニア独立系統運用機関(CAISO)内で午前11時から午後2時の間に供給された電力の40%がメガソーラー(大規模太陽光発電所)から送電された。電源構成に占める太陽光発電の比率が、ここまで高くなったは初めてという。ちなみにこの日の太陽光発電からのピーク電力供給は8784MW(8.784GW)に達した(図1)。

図1●カリフォルニア独立系統運用機関(CAISO)内での
今年3月11日における再生可能エネルギーによる
時間帯別電力供給量(オレンジ色が太陽光発電
(出所:CAISO)


「お金を払って発電する」状態に

 カリフォルニア州では2014年からメガソーラーの新設が加速し、2016年には3GW以上のメガソーラーが新たに建設された。現在、同州には累積18GW以上の太陽光発電が導入されているが、この内9GW以上が高圧送電網に接続されているメガソーラーで、残りが配電網に接続される屋根置きを含む分散型太陽光発電システムである。

 同州では、空調がなくても過ごしやすい冬の終わりから春先にかけ、昼間の電力需要が年間で最も低い「昼間軽負荷期」となる。一方でこの時期、日が伸びるにつれ太陽光の発電量が伸びてくる。そこに、豊富な水力発電が加わり、電力供給が過剰となっている。こうした需給のゆるみを反映し、卸電力市場の前日市場・リアルタイム市場では、過去3カ月間の中で最も低い価格で取り引きされることになった。..Read More Here

February 16, 2017

米加州で80MW超の大規模蓄電池を導入、ガス火力を代替へ 太陽光由来の電気を使い、「ダックカーブ」に対応

Published at Nikkei Technology Online --- ガス火力の燃料不足に現実味

 2016年10月、米カリフォルニア州の天然ガス貯蔵施設で大規模なガス漏れの事故が発生した。天然ガスの不足が危惧され、電力の需要ピーク時における供給不足にも現実味が出てきた。こうした事態の中、同州の州知事は急きょ、出力約100MWの大規模蓄電池の入札、そして建設を電力会社に促した。

 これを受け、カリフォルニア州に数サイトで80MWを超える大規模蓄電池が緊急に導入された。その一つには、米テスラ社が供給した容量80MWh・定格出力20MWのLiイオン蓄電池が含まれる。この蓄電池の運営はすでに2016年末から始まっているが、2017年1月末に正式な完成記念式が行われた。

 「ミラ・ロマ」と呼ばれるこの蓄電池プロジェクトは、10MWの2つのモジュールからなっており、各モジュールは198のパワーパック2(Powerpack2)と、14のインバーターから構成される(計396パワーパック2)。フル充電されていれば、1万5000軒の世帯に4時間分の電気を供給できるという。

図: テスラ社の蓄電池が導入されたカリフォルニア州
「ミラ・ロマ」蓄電池プロジェクトの完成式
(出所:Ernesto Sanchez)

3カ月で80MWhの蓄電池を設置・稼働

 膨大な量の天然ガス漏れが発見されたのは、ロサンゼルス盆地付近にあるアリソキャニオンガス貯蔵施設であった。この貯蔵施設は熱用とガス火力発電所用にガスを供給していたが、安全のために閉鎖されることになった。そのため地域でのガス不足を引き起こしたのである。

 カリフォルニア州で電力小売事業を独占する米サザン・カリフォルニア・エジソン電力会社(Southern California Edison:SCE)は150万の電力顧客数を抱える。SCEは、需要ピーク時の電力供給に天然ガス火力を稼働していた。電力不足を防ぐため、SCEは蓄電池システムの設置を競争入札にかけ、テスラ社が契約者として落札した。

 この緊急の事態に、テスラ社は約3カ月で蓄電池を製造、出荷、建設、そして運営にまでこぎ着けた。蓄電池は、カリフォルニア州ロスアンジェルスから離れた東部の変電所に設置された...See More Here

July 14, 2016

分散型太陽光発電の大量導入が引き起こす「デス・スパイラル」、「ネットメータリング」改正を巡る論争の焦点に

Published at Nikkei Technology Online ---  米国では、太陽電池などのコスト低下、第3者所有者モデルを含むイノベーティブなファイナンシングオプションの普及、さらに、再生可能エネルギーの導入政策の進展により、住宅用などの分散型太陽光発電システムの導入が加速した。

 導入政策の1つが「ネットメータリング制度」で、太陽光の発電分を電力購入単価と同額で相殺し、電気料金を削減できる州レベルの制度である。この経済効果は大きく、太陽光の普及促進に重要な役割を果たしてきた。しかし、普及が進むにつれ、電気料金支払い時に生じる「経済的不公平」への懸念が、ここ数年、米国で議論されている。

ネットメータリングが生む「不公平」


 「経済的不公平」は以下のように生じる。自産自消を促進する分散型太陽光発電システムの導入が増えるにつれ、電力会社の販売する電力の総量は減っていく。電力を利用した量ごとにチャージする「電力量料金(従量料金)」収入が減る。

 ゆえに、電力量料金の一部である送配電網のメンテナンスなどを含む固定費を回収するベースが小さくなる。そこで、固定費を回収するため、電力会社が電気料金の値上げに踏み切った場合、太陽光発電を所有しない電力需要家の負担が相対的に大きくなる、というものだ。

 このような懸念から、ネットメータリング制度の改正と電気料金制度の変更が、電力会社と太陽光発電産業の間で大きな論点となっている。固定費回収のための値上げ、またはネットメータリングの買取価格を小売り同等ではなく、需要と供給に合わせた時間帯別単価を適応する、というものである。

固定費回収が引き起こす「デス・スパイラル」


 これら二つの料金制度はどのように今後の太陽光発電導入に影響するのか?

 この論点をカリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置く米ローレンスバークレー国立研究所(LBNL:Lawrence Berkeley National Laboratory)が定量分析で検証した。その結果は昨年、「ネットメータリングと市場フィードバックのループ:電気料金制度改正が与える分散型太陽光発電導入への影響の検討(Net Metering and Market Feedback Loops:Exploring the Impact of Retail Rate Design on Distributed PV Deployment)」と題したレポートに発表された。...Read More Here

March 29, 2016

「ダックカーブ」改善法、大量導入した太陽光を「水、熱、氷」で蓄える 日中に電力需要をシフトし、再エネの出力抑制を回避

Published at Nikkei Technology Online ---  分散型太陽光発電システムの大量導入で、日中の電力消費量を発電量が上回り、さらに夕方の太陽光の発電が止まる頃、電力需要が急激に上昇するという現象が指摘されている。近い将来、こうした大きな需給ギャップを埋めるのが困難になるのでは、という懸念が数年前、カリフォルニア州で指摘され始めた。

ピーク需要は夕方から夜

 この現象は「ダックカーブ」と呼ばれる。2013年から2020年にかけてのカリフォルニア州における時間別「実質電力需要」と「供給量」のグラフの変化に、その現象が表れている(図1)。この場合の「供給量」とは、電力会社の大規模・集中型発電所から供給される電力量。「実質電力需要」とは、全体の電力消費量から、消費者側の配電網に接続された分散型太陽光・風力発電などの発電量を差し引いたものである。
 元々電力需要を示すグラフは朝から昼にかけ緩やかに上がる。アヒルのしっぽから背中のような曲線を表す。しかし、分散型太陽光発電の導入量の増加につれて、アヒルの背中がお腹へと逆の曲線に変わっていく。太陽光発電などの分散型発電を導入すると、家庭の電力需要は太陽光の電力で賄われるようになり、電力会社から購入する電力量が減る。つまり、分散型太陽光発電の大量導入で、昼間の「実質電力需要」が大きく下がり、この時、電力会社から供給される電力が過剰になる恐れが心配され始めた。

アヒルに飛び方を教える

 問題の一つは、太陽光発電の出力ピークが需要ピークからずれていることである。カリフォルニア州において、太陽光発電システムの発電量は、正午から午後2時にかけてピークを迎える。一方で、ピーク需要は夕方5時から夜8時ごろと、午後のもっと遅い時間に発生する。つまり、供給と需要にギャップが生じるのである。
 もう一つの問題は、需要ピークが急激に上昇することだ。昼間は太陽光発電で実質需要が最低レベルまで下がるものの、太陽光発電からの出力がなくなる夕方には、「本当の」電力需要のピークが訪れる。2020年には約13GWもの需要を、わずか3時間で急速に埋めなければならないと予想されている。

New Report by Regulatory Assistance Project

 ダックカーブ現象により、本来なら調整力として使わないベース電源による供給量を日中に減らさなければならなくなりそうだ。さらに、夕方より大きな需要の差を埋めるために、火力発電設備などの既存設備を待機しておき、出力を急激に上げるという制御が必要になる可能性がある。...See More Here

June 6, 2015

蓄電池の入札に60倍以上の応募、州政府の設置義務で市場拡大へ

Published at Nikkei Technology Online ---  2014年12月に、カリフォルニア州で最大規模の電力会社である米Pacific Gas &Electric(PG&E)社が、78MWの蓄電池の競争入札を開始した。2015年2月末の締め切りまでに、なんと募集の約64倍に相当する5000MW以上の応募があったという。

 PG&E社を含むカリフォルニア州の大手電力会社3社は合計で、2015年中に200MWの蓄電池を落札する予定である。3社による入札は、今後も2016年と2018年、2020年に予定されている。米国でエネルギー貯蔵用の蓄電池の市場が急速に拡大しそうだ。

州政府が蓄電池の設置を義務付け

 カリフォルニア州は、2020年までに再生可能エネルギーによる電力販売比率を33%にする目標を設定している。同州の電力会社は、この目標を予定よりも早く達成できる勢いで太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を進めている。



 しかし、再生可能エネルギーの大規模導入に伴って生じる、電圧変動などの電力系統への悪影響が顕著になってきたため、同州は民間電力会社 3 社(米Southern California Edison(SCE)社、PG&E社、米San Diego Gas & Electric(SDG&E)社)に、2020 年までに合計1325MWのエネルギー貯蔵用蓄電池の設置を義務付けた。州政府が電力会社に対して、蓄電池の設置を義務付ける法律を制定したのは、これが米国で最初の例となった。See More Here