「スイス・アーミーナイフのよう」
北米エネルギー貯蔵協会(ESNA)が主催するエネルギーストレージ関連のイベント「ソーラー・プラス・ストーレージ(太陽光発電とエネルギー貯蔵)サミット」が3月27日にカリフォルニア州サンディエゴ市で開催された。
今回議論の焦点となったのは、太陽光発電システムとエネルギー・ストレージ・システムをいかに併設して統合するか、である。住宅、非住宅、発電事業用のセグメントごとに、併設・統合に伴う課題や解決策が活発に議論された。
近年米国のエネルギー業界では、「エネルギーストレージはスイス・アーミーナイフのようだ」とよく言われる。
電力の需給バランス、電力系統の安定化、ピークカット、ピークシフト、バックアップ電源、調整火力の代替など、多くの機能やメリットを持つからだ。発電、送電、配電、需要家と電力システムのすべてのバリューチェーンで有効性を発揮する。しかし、用途ごとに、その価値を評価し、活用するにあたっては難しい課題を抱えている(図1)。
EV普及でコストダウンの恩恵
ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)でエネルギー・ストレージ・アナリストを務めるローガン・ゴルディースコット氏は講演で、「系統レベルのエネルギーストレージ市場は拡大しているが、依然として小さい」と指摘した。
BNEFの最新のレポートによると、2017年の世界エネルギーストレージ市場は1.17GWに達し、2030年には2016年比で6倍の規模になると予測している。
ゴルディースコット氏が強調したのは、蓄電池メーカーが電気自動車(EV)の需要を満たすために投資を加速し、生産規模を拡大している点である。これにより、エネルギーストレージ業界にとってもコストダウンという恩恵をもたらす。
BNEFの調査によると、発電所に併設するタイプのエネルギーストレージの世界市場は、2017年に700MWをわずかに超えた程度である。しかし、ゴルディースコット氏は、「莫大な数のパイプライン(計画・開発中のプロジェクト)があり、今後2〜3年には大きく成長する」と見る。
さらに、同氏によると、既設のエネルギーストレージ施設は、太陽光発電システムと併設するタイプは少なく、単独で設置されて周波数調整市場など向けに使われるケースが多い。太陽光発電とエネルギーストレージは「相補的」な関係にあるため、今後は両者の併設が進むと予測する。しかし同氏は、エネルギーストレージ市場を将来的に順調に拡大させるためには, 政府による最適な政策が必要だとも言う。Read More Here