January 15, 2017

新設発電設備の3割以上が太陽光、電力会社が「安さ」で調達 州の普及政策なくともPURPA法適用で伸びるメガソーラー

Published at Nikkei Technology Online --- ソーラー州」以外にもメガソーラーが続々

 太陽光発電市場は、基本的に政府による普及政策の動向に大きく左右される。特にシステムコストが高かった当時は、補助金なしに市場が成長することは難しかった。

 そうした状況が、今、大きく変わろうとしている。米国で「ソーラー」と言うと、地球温暖化対策に力を入れているカリフォルニア州が頭に浮かぶ。ところが、2016年からユタやジョージア州といった、本来「ソーラー」と無縁だった州に、多くのメガソーラー(大規模太陽光発電所)が建設され始めた。

 米エネルギー省 エネルギー情報局( Energy Information Administration: EIA)が発表した2016年1月から10月までに建設されたメガソーラー(発電事業用)の州別設置容量で見てみると、ダントツはやはりカリフォルニア州だが、ユタ(UT)そしてジョージア州(GA)が2位と3位になっている(図1)。
図1●米国の州別大規模太陽光発電所設置(2016年1月から10月の設置)
(出所:Energy Information Administration)


かつては、RPS法でメガソーラーが伸びる

 米国における分散型太陽光発電の普及は、システムコストの一部を州や電力会社が助成する補助金制度、そして自産自消で電気料金削減を可能にするネットメータリング制度などがけん引役になってきた。一方、従来の電力事業用の発電所に匹敵する大規模な太陽光発電は「再生可能エネルギー・ポートフォリオ・スタンダード(RPS)法」によって導入が進んだ。

 実際、カリフォルニア州に設置された「ソーラー・スター」と呼ばれる出力576MWのメガソーラーは同州のRPS法を達成することを目的に建設された。2016年で最も規模の大きかった太陽光設備はカリフォルニア州に設置された「トランキリティー」と呼ばれる258MWのメガソーラーで、やはり発電した電力は、地元の電力事業者がRPS法を満たすために買い取る。

 このようにメガソーラーは、従来、主にRPS法対策で建設されてきた。

 だが、現在、発電事業用セグメントで2位と3位につくユタ州とジョージア州では、なんとRPS法が成立していない。そんな中でもメガソーラーの建設が進行する理由は、太陽光発電の発電コストが、従来の化石燃料の発電コストに匹敵するまで低コスト化が進んでいるからだ。

PURP連邦法が原動力

 1970年代に起こったオイルショックの際、「公益事業統制政策法(PURPA)」という連邦法が施行された。同法は、再生可能エネルギーなどの利用により、エネルギー自給率とエネルギー効率向上を目指したもので、再エネやコージェネレーション(熱電併給)システムからの電気を電力事業者に回避可能原価(Avoided Cost:限界発電コスト)で買い取ることを義務付けた。

 つまり、独立系発電事業者(Independent Power Producer:IPP)が、電力事業者の発電コストより低価格で再エネ電力を販売できる場合、電力事業者はその電力を買わなければならない。実際、PURPA法により1980年代半ば以降、カリフォルニア州などでは、風力発電を使ったIPPが低コストを武器に新規参入した。

 ユタ州で最初に設置された太陽光発電所は、104MWの設置容量で2015年末に運転を開始した。現在、420MWと265MWと、さらに大規模な太陽光発電所がユタ州で開発されている。発電した電力は地元の電力会社にPURPA法をもとに購入される。ちなみに、ユタ州での太陽光発電所の発電コストは5セント/kWh前後と言われている。

January 4, 2017

米太陽光市場、2016年は日本を抜き世界2位に 第3四半期4GW超えの建設ラッシュ、32分毎に1MWが新設

Published at Nikkei Technology Online --- 2016年第3四半期(7~9月)の米国における太陽光発電設備の導入容量は、前期比99%増、前年同期比191%増の 4143MW(4.143GW)――米太陽エネルギー産業協会 (Solar Energy Industries Association:SEIA)と米クリーンエネルギーリサーチ・コンサルティング会社のジーティーエム・リサーチ社(GTM Research: GTM) の最新の「米国太陽光発電市場レポート(Solar Market Insight Report)」によると、こんな米国太陽光市場の好調ぶりが明らかになった。
US Q3 2016 Solar Market Update; Source: SEIA/GTM

発電用は堅調、住宅太陽光は飽和気味、


 この導入量は過去最大で、なんと32分毎に1MWの太陽光パネルが設置されたことになる。 市場セグメント別にみると、発電事業用は3.2GWで、総導入量の77%を占めた。米国で太陽光の導入量ナンバーワンのカリフォルニア州では、1GW以上の発電用がこの四半期に設置された。2016年末までに 4.8GW以上の発電事業用の設備が新設される予定なので、2016年第4四半期には第3四半期を上回るとみられる。

 今まで順調に成長してきた住宅用は、前年同期比2%増だったものの、前期比10%減と市場は鈍化した。カリフォルニア州は前期、そして前年同期比ともに縮小した。前年比減は歴史上初めてのことで、同州の住宅太陽光市場が飽和しつつあるように見える。

 一方で、ユタ、テキサス、サウスカロライナ州などの新興州では、住宅太陽光が伸びてきた。しかし、GTM社はこれらの州は補助金の有無に大きく左右されるので、上昇は一時的なものと見ている。


「自産自消」型がオンサイトからオフサイトに移動


 従来、「自産自消」型の太陽光発電は、電力需要のある事業所・工場の屋根上、または敷地内、つまりオンサイトに設置されてきた。

 ただ、ここに来て、徐々に敷地外、または電力需要のない場所、オフサイトへの設置が増加している。2011年には商業用太陽光発電の91%はオンサイトに設置され、オフサイトの比率はわずか9%であった。しかし、2016年にはオフサイト設置は51%に拡大すると予想されている。...Read More Here

December 20, 2016

米ロサンゼルス市、低所得者住宅を対象に「屋根借り太陽光」「2030年に再エネ33%」目指し、太陽光の“砂漠地域”に照準

Published at Nikkei Online Technology ---  ハリウッド、ディズニーランドなどの数々の観光名所を擁す米カリフォルニア州南部に位置するロサンゼルス市。ハリウッドのセレブなど多くの邸宅が立ち並ぶ全米有数の高級住宅街として有名なビバリーヒルズ、ベルエアーもロサンゼルス市の一部にあたる。

「2020年に再エネ33%」に向け太陽光を促進

 しかし、約400万の人口を抱えるこの大都市は、必ずしも全てが「リッチ」ではない。

 同市で電力を供給するロサンゼルス水道電力局 (Los Angeles Department of Water and Power: LADWP)は2016年11月、低所得者を対象として「屋根借り太陽光」事業を始めると発表した。電力会社による住宅用屋根借り太陽光事業は、全米初の試みである。

Source: LADWP

 LADWPは、1909年に設立された歴史を持つ。カリフォルニア州のみならず、全米でも最大規模の公益事業者で、現在140万を超える顧客に電力を供給している。多くの地方公営事業者は主に配電事業を手掛けるが、 LADWPは発電から送電、配電事業を全て持ち、一貫サービスを提供している。

 LADWPは、「2030年に電力需要の50%を再生可能エネルギーで供給する」とのゴールを持っており、現在は中間目標の「2020年までに33%」に向けて再エネ導入を拡大している。目標を達成するため、同社は特に分散型太陽光発電の導入に力を入れている。
「ソーラー革命」から取り残された地域

 ロサンゼルス市は1995年に「ソーラー補助金制度」を開始し、現時点で導入量は177MWに達している。2012年に始まった固定価格買取制度(FIT)を利用して設置された太陽光は16MWで、現在、58MWが建設中である。

 さらに、LADWPは23.5MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)を自ら建設した。ロサンゼルス市は2015年に全米の市別太陽光発電導入量でナンバーワンに輝き、LADWPは2015年に電力会社別の太陽光発電導入量で5位に入った。

 しかし、この「ソーラー革命」とも呼べる太陽光発電の導入拡大は、市全体に偏りなく行き渡っているわけではない。低所得者住宅地は、他の地域に比べると太陽光発電の普及が遅れているのが実態だ。

 低所得者層の多い地域ではソーラーの「砂漠化」が起こっているといわれる。LADWPとしては、「2020年に33%」の目標を達成するためには、より多くの市民の参加が必要となってくる。

 太陽光発電の普及が増え、システム価格が大幅に下がったものの、全ての家庭が手軽に買えるほどの金額ではない。依然として低所得者層には手が届きにくい。さらに、初期設置費用なしのリースやローンもあるが、クレジットチェックで比較的高い「与信能力(支払い能力)」が求められ、低所得者層の多くはこの審査に通らない。... Read More Here

December 13, 2016

「2030年に太陽光で電力の3割賄う」、米政府が目標 メガソーラーの発電コスト、3セント/kWhを目指す

Published at Nikkei Online Technology
2030年に太陽光のコストを半減

 2016年11月、米エネルギー省(Department of Energy: DOE)は、「2030年までに太陽光発電のコストを2020年から半分にする」という「2030ゴール」を発表した。
 それは、電力会社による発電事業のためのメガソーラー(大規模太陽光発電所)のコストを、「2030年には3米セント/kWhまで引き下げる」というものである。
 DOEは2011年に、太陽光発電システムのコスト削減に向けた「サンショット・イニシアティブ(SunShot Initiative)」と呼ばれる10年間に及ぶ技術開発プロジェクトを開始した。
 この「サンショット2020」の開始時のゴールは、2010年に27セント/kWhだった発電事業用のコストを、「2020年に約70%減の6セント/kWhに削減する」というものであった。ゴールの発電コストは、従来の化石燃料の発電コストに匹敵する。ちなみに、太陽光の発電コストには税額控除などの補助金は全く含まれていない。

住宅用は5セント、非住宅用は4セント/kWhに

 その後、太陽光発電産業は目覚ましく前進し、2010年には 27セント/kWhだった発電事業用のコストが現時点で7セント/kWhまで下がり、サンショット開始5年で既に2020年のゴールの約90%を達成するまで下がっている。
 この進展により、DOEはメガソーラーの均等化発電原価(Levelized Cost of Electricity : LCOE)を2030年には、2020年時点の半分の水準でとなる「3セント/kWh」に削減する新たなゴールを設定した。
 さらに、発電事業用と同じように住宅用と非住宅用(商業用)のコスト目標も大幅に引き下げた。非住宅用の発電コストは2020年の7セント/kWhから、4セント/kWhへ、そして住宅用の発電コストは2020年の9セント/kWhから5セント/kWhに設定された。
 ちなみに、現時点での非住宅用の発電コストは13セント/kWh、そして住宅用の発電コストは18セント/kWhと、発電事業用ほどではないが、2020年のゴールの70%はすでに達成している。... Read More Here
サンショット太陽光発電コスト2030年ゴール
(出所:The Department of Energy)