November 26, 2018

経済活性化と電気代削減を同時に実現する”コミュニティ・ソーラー”とは

Published at Solar Journal:

太陽光発電システムの価格は大きく低下してきたものの、 持ち家がない、まとまった資金がないなど、導入に苦しむ電力需要者はまだまだ多い。しかし、地産地消型のコミュニティ・ソーラーなら、誰でも太陽光の恩恵を得ることが可能だ。
太陽光の恩恵を地域で共有全員参加の地産地消システム
様々なメリットが魅力に
8年弱でシェア1.6%増

太陽光発電システムを導入した住宅・非住宅用電力需要者が2010年から10倍にも増加し、その数は累積200万システムにもなる米国。しかし、米国の50%から75%の住宅・非住宅用電力需要者は、太陽光発電には大変興味があるが、システムを導入できる資金がない、アパートに住んでいる、などの理由で太陽光発電システムを導入できないそうだ。その問題を解決してくれるのが、「コミュニティ・ソーラー」。コミュニティ・ソーラーは、地域に設置された太陽光発電システムを住宅・非住宅用電力需要者で共有する、つまり、全ての電力消費者が太陽光の恩恵を受けられる、全員参加型の地産地消システムである。
コミュニティ・ソーラーの仕組みは、電力会社、地方自治体、またはプロジェクトディベロッパー等が太陽光発電所を地域の配電用変電所に近く、日照の良い、広い敷地に開発・設置し、そして運営する。地域の電力消費者は、コミュニティ・ソーラーのシステムを太陽光パネル単位(kW)で購入($/kW)、または一部の発電量を月々購買($/kWh)し、システムの一部を所有することができる。参加者はさらに電気代削減もできる。この重要なメカニズムは「バーチャル・ネットメータリング(VNM)」と呼ばれる課金システムで、コミュニティ・ソーラー参加者が、自宅から離れたコミュニティ・ソーラーで発電された電力を、あたかも自分の屋根で発電しているかのように、自宅の電力消費量を相殺できる。ちなみに、コミュニティ・ソーラーで発電された全ての電力は、地域の電力会社に送られるので、コミュニティ・ソーラーと電力消費者の間で実際には電気は動かない、「バーチャル」な取引となっている。
具体的に、月々300kWh分の発電量をコミュニティ・ソーラーから購買している家庭の電力消費量が500kWhだった場合、その家庭の電気料金の支払いは、消費量から発電量を引いた200kWh分となり、もし消費量が発電量を下回った場合、その違いは次の月に繰越される。ちなみに、コミュニティ・ソーラーは「自産自消」を促す政策なので、基本的に契約できる発電量は家庭の消費量と同等、またはそれ以下と設定されている。
参加者にとって、太陽光の恩恵が得られ、システムの修理・メンテナンスなどに煩わされないというメリットがある他に、システムサイズが大型化することにより、従来の屋根置きより導入コストが低く、ロケーションの選択を含みシステムデザインが最適化できるので、発電量も屋根置きより多いという運営的なメリットもある。さらに、電力需要のある配電網に接続されるので、大規模太陽光発電所(メガソーラー)のような送電線接続する時間・コストがかからない。
~続く~

November 21, 2018

米中間選挙の影で、再エネ政策が大きく進展も 住民投票と知事選でRPS義務量の拡大に大きな支持

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中間選挙とともに知事選と住民投票

 11月6日に行われた米国の中間選挙では、民主党と共和党の上院・下院での議席割合の行方が話題を集めた。実は、この選挙では、太陽光発電を含む再生可能エネルギー政策の今後に直接的に影響する各州レベルの住民投票と知事選挙も並行して実施された。
 これまで米国の太陽光発電を含めた再エネ導入の主な牽引役はRPS(再エネポートフォリオ基準=Renewable Portfolio Standard)だった。RPSは、全ての電気事業者または電力小売事業者に対して、電力販売量の一定割合を再エネ電源から供給することを義務付ける制度である。RPSは州レベルで法律化され、現在29州とワシントンDCで実施されている(図1)。
図1●米州別のRPS義務量
(出所:Berkeley Lab)
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 米国ではさらなる「低炭素化」または「脱炭素化」を目指し、さらには、昨年6月のトランプ大統領の「パリ協定からの離脱」表明などにより、多くの州でRPS義務量の引き上げなど、州レベルでの気候変動対策を強化する動きが強まっている。
 実際、ハワイ州では既に「再エネ100%」を義務化する法案が成立しており、カリフォルニア州でもRPSを「2030年までに60%」に引き上げ、さらに「2045年までにゼロ・カーボン電力」義務が、今年9月に可決されたばかりである。
 RPSは主に州議会で法律化されるが、コロラド州では、2004年11月に米国で初めて住民投票によってRPSを設定した。同州の住民が署名を集めて請求を行い、 法律案を提案し、その賛否を問うために住民投票を行う「住民投票制度の発案(イニシアチブ)」の仕組みを活用した。...Read More Here

November 5, 2018

米メガソーラー設計に見る「傾斜角」の決め方 緯度より小さい「20度」選択し、夏季に効率的に発電

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20~30度が全体の76%

 米国エネルギー省・エネルギー情報局(Energy Information Administration:EIA)によると、2017年までに米国で導入された発電事業用太陽光発電所のうち、累積容量で約40%は固定式架台に設置したものであった。さらに、導入された固定式架台のうち76%は20~30度の間の傾斜角度で取り付けられていたという。
 さらに、細かく見ていくと20度の傾斜角度が全体の35%を占め、25度が34%、30度が6%、そして25.5度が5%という構成割合だった。
 太陽光発電では、米国や日本のような中緯度の温帯地域の場合、30~35度が最も効率的で発電量が多くなる。だが、米国全体で見てみると20度が最も選択されている(図1)。
図1●米国における事業用太陽光(固定式架台)の傾斜角別・導入量
(出所:EIA)
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傾斜角・方位角と発電量の関係

 太陽光発電所から出力される電力量は、太陽光パネルの日射に対する相対的な向きで変わってくる。太陽光パネルに対し日射が垂直である時、最も効率的に太陽光を収集できる。多くの発電量を得るためには、太陽光パネルを設置する「方位」と「傾斜角」が重要になってくる。
 EIAのデータを方位別に分析してみると、180度(真南 )に設置されている太陽光発電所は全体の79%で、195度(真南より西に15度)が7%、200度(真南より西に20度)が3%、190度(真南より西に10度)が2%、そして178度(真南より東に2度)が1%と、南、南西が主流となっている。
 傾斜角を緯度に等しい角度で南向きにパネルを設定すると、太陽光パネルの受ける年間日射量を最大化できるため、緯度はパネルの傾斜角を決める主要因になる。米国では、低緯度(南部)に設置された太陽光発電システムの傾斜角は小さく(緩やか)、高緯度(北部)の場合、傾斜角が大きく(急に)なる。
 比較的低緯度に位置するハワイ州やアリゾナ州は、太陽の南中高度が高くなるので、なるべく太陽光パネルの傾斜角を小さくし、水平に近づけると発電量が増えやすい。逆に緯度の高いオレゴン州やミネソタ州では、パネルはより傾斜を大きく、急にする必要がある。つまり、緯度が下がるにつれて、太陽の南中高度が高くなるため最適な傾斜角は小さくなっていく(図2)。...Read More Here