December 24, 2017

トランプ大統領に「最後の要請」、米SEIAが太陽電池・関税問題で 太陽光発電産業の「アメリカ・ファースト」計画を発表

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米太陽光団体が貿易措置に反対

 米国太陽エネルギー産業協会 (SEIA) は2017年12月4日、 「太陽光発電のためのアメリカ・ファースト計画」をトランプ大統領に提出した。2万6000人以上の雇用を創出している米国太陽光発電産業を守るため、大統領に輸入太陽電池セル(発電素子)、太陽光パネル(モジュール)に対して貿易措置を取らないように要請した。
 行動や発言が予想不可能といわれるトランプ大統領に対して、SEIAは「最後の要請」を提出した格好だ(図1
図1●「太陽光発電のためのアメリカ・ファースト計画」
出所:SEIA
 SEIAがこうした要請をするに至った発端は、2017年4月に米太陽電池メーカーのサニバ社が、米国際貿易委員会(U.S. International Trade Commission:米ITC) に輸入結晶シリコン型太陽電池セルに新たな関税、そして米国以外で生産された結晶シリコン型太陽光パネルに最低価格を課すように提訴したことだ。
 後に、同じく米国内で結晶シリコン型太陽電池を生産しているドイツに親会社を持つソーラーワールド・アメリカ社もサニバ社の提訴に加わった。

パネルの価格が2倍に?

 これに対し、SEIA を筆頭に太陽光発電産業の川下チャンネルでビジネスを営む施工会社、プロジェクトデベロッパー、架台メーカーなどが、輸入セルに関税が課されたら、太陽光パネルの値段が上がり、国内市場と雇用が大きく縮小してしまうと懸念し、大々的な関税反対キャンペーンを繰り広げた。
 しかし、2017年9月に、米ITCは、 国内製造業が深刻なダメージを受けたと認定して、米国の製造業を保護するため措置を取ることを決定した。その後ITCは関税、輸入割当、数量制限、輸入ライセンスの公売などを含む3つの救済措置提案を発表した。
 保守系シンクタンクである米ヘリテージ財団は、提案されている関税は太陽光パネルの価格を約2倍にし、サニバ社、ソーラーワールド社を含む少数の太陽光パネルメーカーに短期間の保護を与えるが、市場から低価格のオプションを奪うことで、米国太陽光発電産業と顧客は大きなダメージを受けるだろう、とコメントしている。...Read More Here

December 20, 2017

米国の州で始まった太陽光・新買取制度の「革新性」 大規模案件の入札結果に連動、農地などに「特別加算」も

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州の目標に「太陽光1.6GW」

 米国マサチューセッツ州は2017年11月、太陽光発電システムの新しい買取制度をスタートさせた。メガソーラー(大規模太陽光発電所)の入札での落札価格をもとに、小・中規模の太陽光発電の買取価格が設定される「ハイブリッド」型にしたのが特徴だ。
 同買取制度は、マサチューセッツ州が定めた再生可能エネルギーの導入目標である「Solar Massachusetts Renewable Target(SMART)」の頭文字をとって、「スマート・ソーラープログラム」と名付けられた。同州は、今後数年間で連系出力合計1.6GWの太陽光発電システムを導入する目標を掲げている。プログラムの対象となる太陽光発電システムのサイズは25kW以下の小規模案件から5MWのメガソーラーまで幅広く設定している(図1)。
図1●1.6GWの太陽光の導入目標を掲げた
(出所:Massachusetts Department of Energy Resources)

 マサチューセッツ州はこれまで、RPS(Renewable Portfolio Standard:再生可能エネルギー・ポートフォリオ基準)法に基づき、太陽光発電・環境価値(Solar Renewable Energy Credit:SREC)買取制度を導入し、既に連系出力1.6GWが導入済みだ。
 しかし、SREC買取制度は株式市場のように価格変動が大きいため、太陽光発電事業者にとっては将来の収入予測が難しく、ファイナンスに課題があった。そのため今回は買取価格を長期間固定し、安定的かつ継続的な収入を確保することでビジネスリスクを下げ、資金調達を容易にする狙いがある。

200MWごとに4%ずつ低下
 スマート・ソーラープログラムの運用では、1.6GWを200MWずつの8つの「ブロック」に分け、ブロックが埋まるごとに買取価格が4%ずつ下がる。これは「逓減ブロック」と呼ばれるモデルで、需要の拡大に応じて価格が低下する仕組みである。... Read More Here

December 10, 2017

米「学校太陽光」が累積約1GWに、カーポートが人気 「TPO方式」採用で、平均サイズ300kWに拡大

Published at Nikkei Technology Online ---  米国の小学校、中学校、高等学校で太陽光発電システムの導入が加速してきた。現在、5498の学校に設置され、2014年から2倍以上に増えた。
 米ソーラーファンデーション財団 (The Solar Foundation)、米太陽エネルギー産業協会(SIEA)、米ジェネレーション180という3つの非営利団体が発表した「より明るい将来」によるもの。

全米設置容量は910MWに

 同レポートによると、全米には合計12万5000の公立・私立小中高等学校があり、太陽光発電システムを導入した学校は、そのうちの4.4%に達する。約390万人の学生が太陽光発電システムのある学校に通っていることになる。
 累積の設置容量は全米910MWで1GWに近づき、年間発電量は140万MWhになった。
 ソーラーファンデーション財団で、社長・エグゼクティブディレクターを務めるアンドレア・ルーケ氏は、「太陽光発電システムの導入によって学校は何百万ドルの電気代を削減でき、節約した資金で、 新しい教員の採用、施設の改善、教育と課外活動の質を高められる。そのうえ、学生はステム(STEM)教育(科学・技術・工学・数学の総合的学習)の実地体験を通じて、太陽からのクリーンエネルギーについて学べる」と語った。

コストアップでも「カーポート」が主流

 州別の導入量を見てみると、最も多いのはカリフォルニア州で、合計出力489MWの太陽光発電システムが1946の学校に導入された。次いで、ニュージャージー州、アリゾナ州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州がトップ5となっている。
 トップ5は全米設置量の87%を占める。トップ5以外では、ネバダ州が米国で最も高い導入率で、同州全体の23%に当たる学校に太陽光発電が導入済みである(図2)。
図2●州別の小中高等学校・太陽光発電導入容量
(累積出力・MW)(青の色が濃いほど設置容量が高い)
(出所:Solar Foundation)

 学校への太陽光発電システムが拡大した背景には、コストの低下がある。
 過去10年で学校に設置された太陽光発電システムのコストは67%下がり、2016年単年でも19%も下がった。2012年に出力200kWのシステムを導入するのにかかった同じコストで、現在は500kWのシステムを導入できるという。... Read More Here