April 27, 2020

新型コロナで軒並みプロジェクト延期、減収・解雇は避けられない? 感染対策が及ぼす、米エネルギー貯蔵産業への影響

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100MWのPPA契約

 CdTe(カドミウムテルル)型化合物系太陽光パネルの供給で世界トップである米メーカーのファースト・ソーラーは、太陽光発電にエネルギー貯蔵を併設したプロジェクトから電力を供給する、15年間に渡る電力購入契約(PPA)を締結したと発表した。
 契約を結んだのは、カリフォルニア州のモントレイベイコミュニティパワー(MBCP)とシリコンバレークリーンエネルギー(SVCE)で、MBCPとSVCEは、カリフォルニア州を代表するコミュニティー・チョイス・アグリゲーター(CCA)である。ちなみに、CCA とは、日本の地域新電力に似た、地方自治体の関与した地域密着型の電力小売事業者で、カリフォルニア州のように大手電力の独占下でも法的に電力事業が認められている。
 このPPAは、カリフォルニア州カーン郡でファースト・ソーラーが開発する連系出力100MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所 )に20MWの大規模エネルギー貯蔵が併設される。このプロジェクトは2022年第2四半期(4~6月)までに完成する予定である。
 新型コロナウイルス(COVID-19)が米国経済に深刻な影響を与えている真只中、ファースト・ソーラーはこのような大規模プロジェクトの開発を継続・進行することができた。
 とはいえ、こうした明るい話題は限定的で、全体として見ればやはり米国のエネルギー貯蔵産業の現況は明るくない。

ビジネスへのインパクトを調査

 新型コロナウイルスの感染拡大に対応した非常事態宣言により、事業活動にも大きな制約が課せれている。米国エネルギー貯蔵協会(ESA)が、4月の2日から11日にかけてコロナウイルスのビジネスにおけるインパクトを調査し、その結果を4月中旬に発表した。
 感染対策の影響が波及するスピードは速く、業界に壊滅的な打撃を与えている可能性があることが明らかになった(図1)。
図1●新型コロナウイルスの影響に関する調査の回答者内わけ(注:オレンジ色=インストーラー・プロジェクトデベロッパー、灰色=メーカー、黄色=サービス、水色=その他、青色=システムオペレーター)(出所:ESA)
 調査は、今年第2四半期(2020年4月から6月)におけるエネルギー貯蔵企業の収益、雇用、そして、プロジェクトに対するCOVID-19の影響を分析することに重点が置かれた。...Read Here More

April 16, 2020

自治体のコロナ対策でリスク回避、米の太陽光建設業 「非接触申請許可」と「遠隔立ち合い検査」を導入

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建設業は「必要不可欠」

 米カリフォルニア州では新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大防止に向け実質的な外出禁止令が3月中旬に発令され、それに伴い非必須(ノンエッセンシャル)事業の停止と従業員の在宅勤務が義務付けとなった。一方、必要不可欠(エッセンシャル)とみなされた社会生活インフラである商業や事業は営業の継続が認められている。連邦政府、さらに多くの州政府は、「建築」をエッセンシャルとみなした。
 建築物の施工や完工には、公的な許認可や検査が必要なものが多く、地方自治体レベルで運営される建設局・建設課が、こうした業務を立ち合いで行ってきた。新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される状況のもと、建築業が円滑に継続されるため、こうした手続きをどのように行い、建築事業者をサポートするかが大きな課題となった。
 これには大きな困難も予想されたが、幸いなことに、課の職員の感染リスクを抑制しながら、設備の安全な設置を保証できる選択肢があるのだ。それは、「非接触(非対面)申請許可」とリアルタイムで行われる「リモート(遠隔)・バーチャル立ち合い検査」である(図1)。
図1●遠隔ビデオによる検査(出所:NFPA)

太陽光の建設には許可と点検

 4月6日、「COVID-19の中、どのように安全な許可・検査を継続するか」と題するセミナーが、サステイナブル・エネルギー・アクション・コミッティ(SEAC)とインタースタイト・リニューアブル・エネルギー・カウンセル(IREC) の共催で行われた。SEACは、ネット・ ゼロエネルギー・コミュニティへの移行を安全かつ効率的にサポートするための情報を提供し、IRECはクリーンエネルギーの普及・推進を目的として1982年に設立された非営利組織である。
 セミナーには主にカリフォルニア州の市役所の建設課で太陽光発電の許可と検査に従事する職員が各局でのCOVID-19前と後の対応方法の違いを語った。
 太陽光発電システムを設置するには電気と建設工事が必要になり、この種の作業には安全性の懸念が伴うため、地方自治体は各太陽光発電が稼働を開始する前に、設置が電気及び建築基準に適応していることを確認する必要がある。
 設置許可申請と点検は官僚的ではあるが、必須なプロセスであり、主に施工業者がサービスの一環として、このプロセスを処理する。...Read More Here

March 31, 2020

米太陽光業界も新型コロナ対策、テスラは「人工呼吸器」生産へ ファーストソーラーはパネル生産を継続、業界団体がガイダンス



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ファーストソーラーは「影響なし」

 米国では大都市の自治体や州政府により、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を防ぐための準備や対策が急ピッチで進んでいる。一般市民、そして企業への積極的な対策、そして対策への参加を求めている。
 3月26日、化合物型太陽光パネルのトップメーカーである米ファーストソーラー(First Solar)が、新型コロナウイルスによるパネル生産への影響について発表した。
 米アリゾナ州に本社を構える同社は、テルル化カドミウム(CdTe)を使った化合物半導体を使った薄膜パネルを開発・製造しており、米オハイオ州ウッド郡、マレーシアのクリム、そしてベトナムホーチミン市で工場を運営している。
 米国ではワシントン州が非常事態宣言を発令したのを皮切りに、市、そして州規模で「外出自粛」「外出禁止」令が発令された。外出禁止令の中、「エッセンシャル・ビジネス」と呼ばれる医療機関、食料品販売などの社会生活を維持する事業や商業に関しては、従来通りビジネスを継続できるが、その他の商業・事業は一時的に店舗・工場を閉鎖するか、オフィスの場合従業員はオンラインによる在宅勤務が求められている。
 同社はオハイオ州のペリスバーグとレイク・タウンシップで工場を持っていて、そのオハイオ州でも、「外出自粛」が発令された。しかし、同社によると、現時点で、ファーストソーラーのオハイオ州の工場は、生産の継続が認められたとしている。ちなみに、ファーストソーラーは、現在、西半球で最大の太陽光パネルの生産規模を有している(図1)。
図1●米ファーストソーラーのオハイオ州にあるパネル工場, Credit First Solar

 オハイオ州と同じように、同社のマレーシア、ベトナムの工場も生産を継続している。
 同社は、2019年第4四半期の投資家向け財務報告の中で、マーク・ウイッドマCEO(最高経営責任者)は、「私たちは、原材料を提供する中国のパートナーを含め、地理的に多様なサプライチェーンを持っているが、現在まで、コロナウイルスの感染拡大による影響をしっかり管理しており、当社の事業に重大な影響はない」と、語った。

テスラは人工呼吸器の生産へ移行

 ニューヨーク州に生産工場を持つ米テスラ(Tesla)は、3月25日に同社の太陽電池セル(発電素子)とパネルの工場を一時的に閉鎖することを発表した。ニューヨークではコロナウイルスの感染者が急増し、人工呼吸器が不足するなどの深刻な事態が起こっている。
 そこで、同社CEOのイーロン・マスク氏は、同社の「テスラ・ギガファクトリー2」と呼ばれるニューヨーク州バッファローの工場で、「人的リソースの可能な限り、早急に人工呼吸器の工場として、生産を再開すると公表した。「ニューヨークの市民を助けるために、持てる力であらゆることに取り組む」とツイッターを通して発表した。...Read More Here

March 24, 2020

米大学で急拡大、メガソーラーからの電力調達 「物理的PPA」と「バーチャルPPA」を使い分け

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40超の大学が「100%」達成

 アップル、マイクロソフト、グーグルなど米国リーディング企業だけでなく大学などの教育機関でも再生可能エネルギーへの転換が急速に拡がっている。
 米エンバイロメント・アメリカ・リサーチ・ポリシーセンターによると、既に40を超える米国の大学(州、公、私立、2・4年制)は「100%転換」を実現しているという。現在、多くの大学が気候変動対策に本腰を入れ、太陽光発電設置の導入と太陽光発電電力の調達を積極的に拡大している。
 現在、再エネ調達量で米国トップの大学は、米最大規模の州立大学群であるカリフォルニア大学。現在、同校による再エネ調達量は年間273ThW (2兆7300万kWh)を超える。
図1●カリフォルニア大学デイビス校に設置された自家消費用のメガソーラー。大学のキャンパスは左上(出所:Regents of the University of California, Davis campus)

 同大学は、2025年まで電源を100%再エネまたはゼロカーボン電源に転換する目標を掲げている。同大学は既に州内に建設された合計80MWの太陽光発電所から電力を調達済みで、連系出力16.3MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)を含む大規模な設備もキャンパス内や付近に導入している(図1)。

スタンフォード大は太陽光で100%

 大学の中には、太陽光発電だけで「100%」を実現しようとしている大学がある。
 それは、世界でトップレベルの大学である、スタンフォード大学である。同大学は、来年2021年には「大学で消費する電力を100%太陽光発電に賄う」という目標が達成されるという。同校は既に78MWの太陽光発電を調達済みで、現在88MWの太陽光発電所が同大学向けに建設されている。
 最初のメガソーラーである「スタンフォード太陽光発電所#1」は出力67MWで、カリフォルニア州に建設され、2016年に運転を開始した。また、2017年には同校のキャンパス内に合計出力5MWの屋根上太陽光発電を設置した。