March 31, 2020

米太陽光業界も新型コロナ対策、テスラは「人工呼吸器」生産へ ファーストソーラーはパネル生産を継続、業界団体がガイダンス



Published at Nikkei Technology "Mega Solar Business"

ファーストソーラーは「影響なし」

 米国では大都市の自治体や州政府により、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を防ぐための準備や対策が急ピッチで進んでいる。一般市民、そして企業への積極的な対策、そして対策への参加を求めている。
 3月26日、化合物型太陽光パネルのトップメーカーである米ファーストソーラー(First Solar)が、新型コロナウイルスによるパネル生産への影響について発表した。
 米アリゾナ州に本社を構える同社は、テルル化カドミウム(CdTe)を使った化合物半導体を使った薄膜パネルを開発・製造しており、米オハイオ州ウッド郡、マレーシアのクリム、そしてベトナムホーチミン市で工場を運営している。
 米国ではワシントン州が非常事態宣言を発令したのを皮切りに、市、そして州規模で「外出自粛」「外出禁止」令が発令された。外出禁止令の中、「エッセンシャル・ビジネス」と呼ばれる医療機関、食料品販売などの社会生活を維持する事業や商業に関しては、従来通りビジネスを継続できるが、その他の商業・事業は一時的に店舗・工場を閉鎖するか、オフィスの場合従業員はオンラインによる在宅勤務が求められている。
 同社はオハイオ州のペリスバーグとレイク・タウンシップで工場を持っていて、そのオハイオ州でも、「外出自粛」が発令された。しかし、同社によると、現時点で、ファーストソーラーのオハイオ州の工場は、生産の継続が認められたとしている。ちなみに、ファーストソーラーは、現在、西半球で最大の太陽光パネルの生産規模を有している(図1)。
図1●米ファーストソーラーのオハイオ州にあるパネル工場, Credit First Solar

 オハイオ州と同じように、同社のマレーシア、ベトナムの工場も生産を継続している。
 同社は、2019年第4四半期の投資家向け財務報告の中で、マーク・ウイッドマCEO(最高経営責任者)は、「私たちは、原材料を提供する中国のパートナーを含め、地理的に多様なサプライチェーンを持っているが、現在まで、コロナウイルスの感染拡大による影響をしっかり管理しており、当社の事業に重大な影響はない」と、語った。

テスラは人工呼吸器の生産へ移行

 ニューヨーク州に生産工場を持つ米テスラ(Tesla)は、3月25日に同社の太陽電池セル(発電素子)とパネルの工場を一時的に閉鎖することを発表した。ニューヨークではコロナウイルスの感染者が急増し、人工呼吸器が不足するなどの深刻な事態が起こっている。
 そこで、同社CEOのイーロン・マスク氏は、同社の「テスラ・ギガファクトリー2」と呼ばれるニューヨーク州バッファローの工場で、「人的リソースの可能な限り、早急に人工呼吸器の工場として、生産を再開すると公表した。「ニューヨークの市民を助けるために、持てる力であらゆることに取り組む」とツイッターを通して発表した。...Read More Here

March 24, 2020

米大学で急拡大、メガソーラーからの電力調達 「物理的PPA」と「バーチャルPPA」を使い分け

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40超の大学が「100%」達成

 アップル、マイクロソフト、グーグルなど米国リーディング企業だけでなく大学などの教育機関でも再生可能エネルギーへの転換が急速に拡がっている。
 米エンバイロメント・アメリカ・リサーチ・ポリシーセンターによると、既に40を超える米国の大学(州、公、私立、2・4年制)は「100%転換」を実現しているという。現在、多くの大学が気候変動対策に本腰を入れ、太陽光発電設置の導入と太陽光発電電力の調達を積極的に拡大している。
 現在、再エネ調達量で米国トップの大学は、米最大規模の州立大学群であるカリフォルニア大学。現在、同校による再エネ調達量は年間273ThW (2兆7300万kWh)を超える。
図1●カリフォルニア大学デイビス校に設置された自家消費用のメガソーラー。大学のキャンパスは左上(出所:Regents of the University of California, Davis campus)

 同大学は、2025年まで電源を100%再エネまたはゼロカーボン電源に転換する目標を掲げている。同大学は既に州内に建設された合計80MWの太陽光発電所から電力を調達済みで、連系出力16.3MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)を含む大規模な設備もキャンパス内や付近に導入している(図1)。

スタンフォード大は太陽光で100%

 大学の中には、太陽光発電だけで「100%」を実現しようとしている大学がある。
 それは、世界でトップレベルの大学である、スタンフォード大学である。同大学は、来年2021年には「大学で消費する電力を100%太陽光発電に賄う」という目標が達成されるという。同校は既に78MWの太陽光発電を調達済みで、現在88MWの太陽光発電所が同大学向けに建設されている。
 最初のメガソーラーである「スタンフォード太陽光発電所#1」は出力67MWで、カリフォルニア州に建設され、2016年に運転を開始した。また、2017年には同校のキャンパス内に合計出力5MWの屋根上太陽光発電を設置した。

March 12, 2020

米住宅太陽光・蓄電池の市場動向、「LG」「テスラ」が2強に ハリケーンに備え、蓄電池設型が2017年から倍増

 2019年の米国住宅用太陽光発電市場において、顧客はどのブランドを最も指定したのか?それは、韓国の大手企業グループである「L G」と、米国の電気自動車(EV)ベンチャーから成長している「TESLA(テスラ)」であった。
 米国での「蓄電池併設型太陽光発電」の販売、蓄電池のブランド評価、そして太陽光発電産業に携わる施工事業者の今後の事業戦略などのトレンドに関する調査結果が発表された。これは、全米 の太陽光発電施工事業者を対象としたアンケート調査で、米エネルギーセイジ(EnergySage)と米NABCEPが共同で実施した。
 米エネルギーセイジは、オンラインによる太陽光発電見積もりサービスを提供している。また、NABCEPとは「北米公認エネルギー実務者委員会(North American Board of Certified Energy Practitioners)」の略で、再生可能エネルギー産業に携わる施工業者などから構成される。
 調査の対象となったのは全米48州とワシントンD Cにわたる772の太陽光発電販売・施工事業者で、2019年12月末から2020年1月末にかけて実施された。ちなみに、この調査は今年で5回目になる。
 住宅用太陽光の購入を考えている消費者は、太陽光パネル、パワーコンディショナー(PCS)、そして蓄電池などの機器に対して、特定の趣向はあるのだろうか? 調査によると、消費者は前にも増して、積極的に太陽光発電関連機器の「リサーチ」を行っているため、機器に関する知識が高い。そのため、特定のブランドへの趣向・要求が増えていることがわかった。
 2019年最も指定されたブランドは、L Gとテスラ。L Gは太陽光パネルと蓄電池の両方で指名されているが、テスラは蓄電池のみでトップについた。3位の米エンフェーズと4位のソーラエッジは共にマイクロインバーターメーカーである。5位のパナソニックと米ソーラーパワーは共に高変換効率タイプの太陽光パネルで有名で、共に蓄電池を含めたトータルソリューションも提供する。つまり、消費者は、プレミアム価値のある機器を提供するメーカーへの趣向を見せている(図1)。..Read More Here
図1●2019年・消費者による住宅用太陽光関連機器のプランド評価
(出所:EnergySage)

March 4, 2020

「RE100」IT大手に押され、バージニア州でメガソーラー続々 データセンターに供給、初の「蓄電併設型」も導入へ

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IT大手のデータセンターが集積

 米バージニア州と聞くと、政策的に太陽光発電に熱心な州というイメージはないが、実際には、着々と太陽光の導入が拡大している。米国太陽エネルギー協会(SEIA)によると、同州は、太陽光発電の累積導入量ですでに全米17位(2019年第3四半期時点)とトップ3分の1に入る。
 実は、同州で今まで太陽光発電導入を牽引してきたのは、州政府ではなく、なんと、データセンターなのである。
 米IT業界のリーディング企業の拠点は、シリコンバレーと呼ばれるカリフォルニア州北部に集中しているが、それら企業のデータセンターはバージニア州北部に集積している。バージニア州で最もデータセンターの運営規模が大きいのはアマゾン ウェブ サービス(AWS)。フェイスブック、マイクロソフトも同州でデータセンターを運営している(図1)。
図1●「データセンター裏通り」とも呼ばれるバージニア州北部
(出所:Data Center Frontier)

「経済効果」を守る

 電力市場が完全に自由化されていないバージニア州で、最大規模の電力会社はドミニオン・エネルギー・パワー(以下ドミニオン)である。同社は発電から送電まで行う垂直統合型の地域独占電力会社であり、環境保護や再生可能エネルギーにはかなり遅れをとっていた。
 AWS、フェイスブックなどデータセンターを運営する企業グループは、国際イニシアチブ「RE100」に加盟するなど再エネ転換にたいへん積極的で、バージニア州の規制当局に対し、州内での再エネの選択肢を増やすことを要望してきた。
 こうした声に応える形で、ドミニオンはメガソーラー(大規模太陽光発電所)の開発に乗り出した。その背景には、データセンターによる経済効果を同州に留めるためには、十分な再エネ電力を提供できる体制を整えることが不可欠という判断がある。
 実際、ドミニオンはすでにAWS向けに6基のメガソーラー (合計出力260MW)をバージニア州で稼働している。さらに、今年1月に新たに120MWのメガソーラー をAWSと同州のアーリングトン郡用に建設することを発表した...Read More Here