July 21, 2016

蓄電池は太陽光の強壮剤! 分散電源が電力市場変える: 北米「インターソーラー2016」レポート

Published at Nikkei Technology Online ---  今年で9年目を迎える太陽光発電関連で北米最大規模の総合イベント「Intersolar North America(北米インターソーラー)」(2016年7月11~13日)が、米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された。

蓄電池の展示会と同時開催に


 今回のイベントは、蓄電池およびエネルギー貯蔵システムの展示会である「ees (electrical energy storage) North America」と同時開催となった。背景には、太陽光発電の大量導入で論議を呼んでいるネットメータリング制度の改正・廃止など、太陽光を巡る大きな環境変化がある。

 両イベントは、3日間の専門セミナーと展示会・技術講演会で構成され、約500社が出展し、来場者数は1万8000人を上回った(図1)。

図1●カリフォルニア州、サンフランシスコで開催された北米インターソーラー。
今年はエネルギー貯蔵システムの展示会eesと同時開催
(出所:Solar Promotion International GmbH・July 2016)

 イベントのキーワードは、「Storage(蓄電池)と太陽光発電を含むDER(分散型電力資源:Distributed Energy Resource)のグリッド・インテグレーション(系統への統合化)」である。

 従来、電力会社が独占し、一方通行だった発電と電力販売のビジネスがどのように多様化していくのか。大量導入されるDERを各電力会社のグリッドに組み込んで統合し、需給バランスを維持しつつ、いかに新しいビジネスを生み出すか、こうした問題意識がディスカッションのポイントとなった。

米国蓄電池市場は2021年には9倍に拡大


 米国エネルギー貯蔵システム協会(Energy Storage Association)でディレクターを務めるJason Burwen氏は、「米国蓄電池市場は2021年には2GWを超え、2015年から9倍に拡大する」と語った。

 さらに、2021年には需要側(配電網)に設置される蓄電池は送電網側に設置される蓄電池容量に匹敵するとも言う。....Read More Here

July 19, 2016

アメリカで電力小売り自由化が人気!

Published at Solar Journal:
日本では今年4月に電力小売り全面自由化が始まったが、米国では1990年代に自由化が始まっている。開始して20年程が経つ米国では、どのようなサービスが登場し、消費者はいかに電力会社を選択しているのか。米国の現在の様子から、日本の市場の行方を見る。

州レベルで電力自由化が実施される米国

現在50州中14州およびワシントンDCで電力小売の全面自由化を実施中である。電力の規制が国レベルではなく州レベルで可決される米国では、自由化をしている州もあれば、しない州、さらにカリフォルニア州のように自由化を試みたが失敗し、自由化が「保留」になっている州も存在する。
小売り自由化されている市場で最も規模が大きいのはテキサス州で、次いでオハイオ州、ニューヨーク州、ペンシルベニア州など東海岸の州がトップを占める。

太陽光100%の電力プランで地域貢献

テキサス州オースティン市に拠点を持つGreen Mountain Energy 社は、1977年より再生可能エネルギーの小売販売を始めた。
同社は現在自由化を実施しているテキサス、ペンシルベニア、ニューヨークを含む7州で電力小売り販売を行っている。
同社が提供する電力プランの中で最も人気を博しているのが、太陽光発電で作った電気だけを買うことができる、「SolarSPARC(ソーラースパーク)」というプランだ。契約者が家庭の電力消費を太陽光発電の電力で1%賄えるだけではなく、地域への太陽光発電設置の導入も促進する。
Green Mountain Energy 社はSolarSPARC の契約数ごとに、毎月4米ドルを寄付して積み立てており、その寄付金で6ヶ月ごとに、新しい太陽光発電施設を地域に設置する計画になっている。
つまり、契約者が多ければ、より多くの、またはより大きな太陽光発電施設を設置できるというわけだ。...Read More Here

July 14, 2016

分散型太陽光発電の大量導入が引き起こす「デス・スパイラル」、「ネットメータリング」改正を巡る論争の焦点に

Published at Nikkei Technology Online ---  米国では、太陽電池などのコスト低下、第3者所有者モデルを含むイノベーティブなファイナンシングオプションの普及、さらに、再生可能エネルギーの導入政策の進展により、住宅用などの分散型太陽光発電システムの導入が加速した。

 導入政策の1つが「ネットメータリング制度」で、太陽光の発電分を電力購入単価と同額で相殺し、電気料金を削減できる州レベルの制度である。この経済効果は大きく、太陽光の普及促進に重要な役割を果たしてきた。しかし、普及が進むにつれ、電気料金支払い時に生じる「経済的不公平」への懸念が、ここ数年、米国で議論されている。

ネットメータリングが生む「不公平」


 「経済的不公平」は以下のように生じる。自産自消を促進する分散型太陽光発電システムの導入が増えるにつれ、電力会社の販売する電力の総量は減っていく。電力を利用した量ごとにチャージする「電力量料金(従量料金)」収入が減る。

 ゆえに、電力量料金の一部である送配電網のメンテナンスなどを含む固定費を回収するベースが小さくなる。そこで、固定費を回収するため、電力会社が電気料金の値上げに踏み切った場合、太陽光発電を所有しない電力需要家の負担が相対的に大きくなる、というものだ。

 このような懸念から、ネットメータリング制度の改正と電気料金制度の変更が、電力会社と太陽光発電産業の間で大きな論点となっている。固定費回収のための値上げ、またはネットメータリングの買取価格を小売り同等ではなく、需要と供給に合わせた時間帯別単価を適応する、というものである。

固定費回収が引き起こす「デス・スパイラル」


 これら二つの料金制度はどのように今後の太陽光発電導入に影響するのか?

 この論点をカリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置く米ローレンスバークレー国立研究所(LBNL:Lawrence Berkeley National Laboratory)が定量分析で検証した。その結果は昨年、「ネットメータリングと市場フィードバックのループ:電気料金制度改正が与える分散型太陽光発電導入への影響の検討(Net Metering and Market Feedback Loops:Exploring the Impact of Retail Rate Design on Distributed PV Deployment)」と題したレポートに発表された。...Read More Here

July 1, 2016

300軒分の住宅太陽光と蓄電池で「仮想発電所」を構築, NYの大手電力が「クリーンで災害に強い」新サービス

Published at Nikkei Technology Online --- 電力大手と太陽光パネル、蓄電池メーカーが連繋

 米ニューヨーク州の大手電力会社 Consolidated Edison(以下Con Ed)社は、1500万米ドルを投じ、「仮想発電所(バーチャルパワープラント:VPP)」のパイロットプログラムを開始すると発表した。米SunPower社と米SunVerge社とのパートナーシップのもとで実施する。
 同プログラムでは、ニューヨーク州の「エネルギービジョンの改革(REV)」の一部で、同州ブルックリン市とクイーンズ市の家庭約300戸に高効率太陽光発電システムと定置型Liイオン蓄電池を設置し、Con Ed社が「仮想発電所」として制御する。
 多数の小規模太陽光発電と蓄電池をアグリゲーション(集約・統合管理)することにより、非常時のバックアップ用途だけではなく、グリッド(電力系統)の復元力、信頼性、そしてサステナビリティの改善を目指す。
 「仮想発電所」とは、送配電系統の需給に合わせ、太陽光や蓄電池などの分散電源をあたかも一つの発電所のように群制御することで、需給バランスを最適化する次世代型の電力ビジネスモデルである(関連記事)。Con Ed社では、従来のエネルギー供給モデルを補い、経済的、効率的、そしてイノベーティブな仮想発電所の提供を目指す。

需給ミスマッチを蓄電池の「放電」で最適化

 ニューヨークでは2014年の1年間で過去の累計設置容量を上回る勢いで屋根置きの太陽光が設置された。太陽光の導入拡大は温室効果ガスの削減と大気質の改善に大きく貢献することは間違いない。
 ただ、Con Ed社のサービス管轄内では、太陽光発電による電力供給のピーク時間帯と電力需要のピーク(午後5時以降)が異なっている。従って、夕方から夜にかけては、化石燃料を燃やす火力発電に依存することになり、太陽光によるクリーンな電力を送配電網の貴重な資産として最大かつ最適に活用できない(図2)。
図2●Con Ed社のサービス管轄内に設置された太陽光発電システム(白丸)と電力需要:
青色は日中の電力需要がある地域を示し、黒色は電力需要が夕方・夜に起こる地域を示す。
太陽光発電と需要ピークのミスマッチがわかる(出所:Consolidated Edison社)