January 10, 2021

「もっとソーラー、もっと安い」、電力会社も太陽光で割安料金を打ち出す 米電力大手、大規模蓄電池から「安い太陽光の電気」を供給へ

 Published at Nikkei Technology Mega Solar Business


かつては「プレミア付き」だったが…

 「太陽光発電で電気代がお得に!」「太陽光発電で家庭の電気代を削減できます!」――住宅用太陽光発電システムの販売促進では、施工会社がこうした広告で訴求するのは珍しくないが、最近ではこうした宣伝文句を、大手電力会社が打ち出している。つまり、自家消費だけではなく、電力会社の電力販売サービスのレベルでも、太陽光発電から提供する方が「お得」なのだ。

 「もっとソーラーエネルギー、もっと安い」と、顧客にアピールするのは、米ネバタ州を管轄エリアとしている大手電力会社であるNVエネルギー(NV Energy)。同社は、気候変動対策として温室効果ガス排出量の削減と再生可能エネルギーの導入拡大を進めると同時に、顧客の電気料金削減に成功している。以前だったら、電力会社からの「再エネプラン」は環境価値プレミアムが付き「割高」とされていたが、現在は、電力会社が「ソーラーエネルギーと低価格」を共に消費者に提供できるようになったのだ(図1)。

図1●「もっとソーラーエネルギー、もっと安い」と、顧客にアピールするNVエネルギー
(出所:NV Energy)

法律で「2030年・再エネ50%」

 NVエネルギーは、2013年以降、ネバダ州南部に電力を提供する石炭火力発電所の所有権を完全に手放し、ネバダ州北部に残っている同社唯一の石炭火力を2025年までに廃止する予定である。実際、同電力会社の電力需要を満たすための石炭火力利用率は、2013年の18%から2020年4%にまで減少した(図2)。

図2●左はNVエネルギー社の石炭火力発電所の所有率、右は同社の再エネ調達量の推移
(出所:NV Energy)

 さらに、NVエネルギーは、ネバダ州の「再生可能エネルギーポートフォリオ基準(RPS)」を10年連続で超えた。ちなみに、「RPS」とは、全ての電気事業者または電力小売事業者に対して、電力販売量の一定割合を再エネ電源から供給することを義務付ける法律である。RPSは州レベルで法制化され、現在29州とワシントンDCで実施されている。

 大自然のスケールと迫力を満喫できるグランドキャニオンと1日中ネオンが輝くカジノが並ぶラスベガスで有名なネバダ州は、よりクリーンで、グリーンなエネルギーの将来を目指し、2030年までに同州の電力源の50%を再エネで、そして2050年までに100%をカーボンフリー(二酸化炭素を出さない)電源で満たすことを2019年4月に法制化した。...Read More Here

December 28, 2020

太陽光「過剰設備」と「出力抑制」で発電コスト削減!? 「暗黙のストレージ」で、蓄電池の容量を減らす

 Published Nikkei Technology - Mega Solar Business


「再エネ100%」実現戦略を分析

 「過剰な設置と出力抑制でクリーン電力100%を達成する」という、何ともショッキングなタイトルのウエビナー(WEB 上でのセミナー)が今月中に15日間、開催された。主催者は、クリーン・エネルギーを推進する非営利連合である米クリーン・エネルギー・ステイツ・アライアンス(CESA)である。

 電力会社では、必要以上の「過剰な発電所」は無駄な投資であり、太陽光を含む発電事業者にとって「出力抑制」は収入の減少を意味する。「過剰な設備と出力抑制」を推奨するようなセミナータイトルには、誰しも違和感を持つだろう。

 この発表は、電力需要を100%再生可能エネルギーで賄うための研究活動の一環になる。具体的には、クリーン・エネルギーに関するリサーチを行う米クリーン・パワー・リサーチ(Clean Power Research)が、米中西部の地域送電機関(RTO)であるミッドコンティネント独立システムオペレーター(MISO)のサービス地域全体で再エネ100%を模索する研究・調査分析の一部である。

 この分析の結果としてMISO地域において、太陽光と風力発電の「過剰な建設と出力抑制」が最も費用対効果の高い「再エネ100%」実現戦略であることを示した。 

 「再エネの拡大と迅速な送電」を効果的に実現することを目指し、発電設備のテクノロジーと最適な導入量、そして需給バランスを調整するテクノロジーを見出すため、シナリオ分析が行われた。クリーン・パワー・リサーチでリード・アナリストを務めるマーク・ペレズ氏がそれぞれのシナリオと分析結果を発表した。

なぜ「暗黙のストレージ」なのか?

 まず、(1) 発電設備のテクノロジーには、太陽光と風力発電、(2) 需給バランスを調整するテクノロジーには、リチウムイオン蓄電池などの電力貯蔵、そして「暗黙のストレージ(貯蔵)」との位置づけで「過剰な発電設備」とその「出力抑制」を考慮した。どうして「暗黙」と呼ぶのかという質問にペレズ氏は、「過剰な発電設備と出力抑制は、事実上、需給バランスを調整する機能を持っているから」と答えた。

 シナリオでは、太陽光と風力発電、さらに電力貯蔵のコストを大きく左右するテクノロジーの発展度合いを、2025年に「高いケース」「低いケース」、そして2050年に「高いケース」「低いケース」の4つのシナリオも加えた。...Read More Here


December 16, 2020

住宅太陽光がさらに大容量化、「蓄電池併設」も増加 データで見る2019年の米国分散型太陽光市場

 Published Nikkei Technology Mega Solar Business


 今月、米エネルギー省(DOE)の研究所であるローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)が、2019年度(1~12月)における分散型太陽光発電の米国市場に関する統計データ分析を発表した。

 ここでいう「分散型太陽光発電」とは、屋根置き、または地上設置で連系出力5MW以下の、住宅用と非住宅用の太陽光発電を対象としている。非住宅用システムは、大型と小型に分けられており、「小型」は100kW以下、「大型」は100kW以上5MW未満となっていてメガソーラー(大規模太陽光発電所)も含まれている。

 ちなみに、同研究所が収集したデータは、2019年までに設置された190万件を超えるシステムが含まれており、同期間中に全米で実際に設置・導入されたすべての分散型太陽光システムの82%をカバーしている。

住宅用太陽光の規模はかつての3倍

 2019年の住宅用システムの規模を見ると、中間値(データを小さい順に並べた時の中央の値)は6.5kWで、前年比1.25%増であった。10年前の2009年は4.7kW、データ収集が始まった1999年の中央値は2.3kWだったので、21年間で住宅システムの平均的なサイズは、実に約3倍に大容量化していることになる(図1)。

図1●米国セグメント別分散型太陽光発電のシステムサイズの推移(注:折線=中間値、左=住宅用、右=非住宅用)
(出所:Lawrence Berkeley National Laboratory)

 非住宅用システムの中間値は、データ収集が始まった2001年は5.7kWに留まっていたが、2009年には16kWまで大きくなってきた。ただ、非住宅用システムの大規模化は、ここにきて頭打ち傾向にあり、2019年の中間値である40kWは前年比13%減で、初の減少を示した。... Read More Here

December 1, 2020

1GW超える米最大「ギガソーラー」着工、AT&T・ホンダなどとPPA テキサス州に建設、先進企業5社・3自治体が電力購入

 Published Nikkei Technology Mega Solar Business

1.31GWで総投資額16億ドル

 テキサス州で現在、米国で最大規模となる1.31GW(1310MW)もの巨大な太陽光発電所の開発が進んでいる。この「ギガソーラー」の建設は今年7月に既に始まっていて、完成した時の総発電量は、米国一般家庭の約30万世帯分に相当する消費電力になるという。

 「サムソン・ソーラー・エネルギー・センター(以後サムソン)」と呼ばれるこのプロジェクトは、テキサス州の北東部に建設されていて、総投資額はなんと16億米ドル。

 現在建設済み・稼働中の米国最大規模のメガソーラー(大規模太陽光発電所)は、連系出力579MW・太陽光パネルの出力747.3 MWの「ソーラー・スター」と呼ばれるプロジェクトで、2015年7月にカリフォルニア州で稼働を開始した。稼働時は、米国で最大規模だけでなく、世界で最大規模でもあった(図1)。

図1●現在米国の稼働中で最大規模のメガソーラー「ソーラー・スター」
(出所:SunPower)

「ジェミニ」は896MW

 意外なことに、米国では5年が経った今まで「ソーラー・スター」を超える規模のメガソーラーが出てこなかった。

 そんななか、今年5月にネバダ州南部のモハビ砂漠付近に計画されている「ジェミニ・ソーラー」プロジェクトと呼ばれるメガソーラー事業が連邦政府の承認を得て、ようやく「米国最大規模」のメガソーラーの記録を更新しようとしていた。そのサイズはパネル出力896MW・連系出力690MWで、出力380MW・容量1400MWhのリチウムイオン蓄電池によるエネルギー貯蔵も併設される予定である。この発電所の電力は、ネバダ州で地域独占電力会社NVエネルギー(NV Energy)に25年間の長期電力購入契約(PPA)を通じて供給される。ちなみに、2023年12月に商業稼働を開始する予定である(図2)...Read More Here

図2●建設に取り掛かろうとしている「ジェミニ・ソーラー」の計画図
(出所:Quinbrook Infrastructure Partners and Arevia Power)