September 26, 2017

米電力会社が系統・需要側の双方で「蓄電池導入プラン」 蓄電池市場は327MWから2020年に2.5GWに急拡大へ

Published at Nikkei Technology Online ---

2017年に207MWの蓄電池を接続

 電力需給のバランス、電力系統の安定化、ピークカット、ピークシフト、バックアップ電源、調整火力の代替など多彩な機能・利点をもつ「電力貯蔵システム」の導入が、米国で拡大し始めている。発電所や変電所に併設される大規模蓄電池だけでなく、家庭や事業所、工場など需要家側の中小規模の蓄電池システムの導入も増え始めている。
 「まだ小規模ですが、蓄電池市場の成長は加速しています」――。電力会社で構成される米スマート・エレクトリック・パワー協会(SEPA)でCEO(最高経営責任者)兼社長を務めるジュリア・ハム氏は、9月中旬に開催された北米最大の太陽光発電関連の国際展示会「ソーラー・パワー・インターナショナル(Solar Power International=SPI) 2017」で、こう語った。実際、SEPAによると、昨年出力207MW(容量257MWh)の蓄電池が電力系統に接続された。
 SEPAは電力会社を対象に実施したアンケートをもとに、「2017年電力会社電力貯蔵市場概念」というレポートをSPI開催に先駆けて発表した。全米の115電力会社がこの調査に参加した。ちなみに、米国には約1億3000万の需要家(顧客口座)がおり、民営・公営など3000以上の電気事業者が電気を供給している。アンケートに参加した電力会社の契約顧客数は、7500万以上に達し、全米の電力需要家の58%を占める。
 この調査結果によると、2016年末時点で累計622MW(661MWh)の蓄電池が設置されている。つまり、2016年だけで累積容量の39%が導入されたことになる。ここにきて、いかに急速に蓄電池が普及し始めたかが分かる(図1)。
図1●州別累積電力貯蔵システム導入容量(MWh)
(出所:SEPA)

カリフォルニア州が半分以上を占める

 2016年の蓄電池導入データを州別に見てみると、太陽光発電と同様に、カリフォルニア州が120.5 MW(176.6 MWh)と、群を抜くナンバーワンで、出力で58%、容量で69%を占めた。2位はインディアナ州の22 MW( 20.8 MWh)、2位はオハイオ州の16.1 MW(16.2 MWh)となっている。
 カリフォルニア州では蓄電池に対する政府の推進策と助成制度が充実している。同州は、2010年に州の民間電力会社3社に対し、2020年までに1.3GWの電力貯蔵システムを導入することを義務付けた。1.3GWのうち50%は電力会社所有となっている。...Read More Here

September 20, 2017

米展示会レポート、 太陽光市場の成長は蓄電池が担う! EV普及で定置型蓄電池の低コスト化が加速との見方

Published at Nikkei Technology Online -- 北米最大の太陽光関連展示会に2万人来場

 北米最大の太陽光発電関連の国際展示会「ソーラー・パワー・インターナショナル(Solar Power International=SPI) 2017」(2017年9月10~13日)がネバダ州ラスベガスで開催された。今年も昨年と同様、北米最大のエネルギー貯蔵関係の国際展示会「エネルギー・ストレージ・インターナショナル(Energy Storage International = ESI)との併催となった。今年で14年目を迎えるSPIは 2万人を超える参加者を動員し、大きな賑わいを見せた。

 ちなみに、今回の会場となったマンダレイベイ・ホテル&カジノのコンベンションセンターの屋根には出力6.4MWの太陽光発電システムが設置されている。2年前に稼働したこの発電システムは、ホテルそしてカジノのピーク需要の20%を賄っているという。

太陽光と蓄電池の統合がトピックに

 さて、今回のSPIでの大きなトピックの1つは「太陽光発電の大量導入による蓄電池の統合」であった。これまでのSPIでは、太陽光発電の導入を拡大するため、コスト削減や政府の普及政策などのトピックが多くを占めた。

 従来、太陽光発電はRPS法(再生可能エネルギー導入義務制度)など、公的な政策主導で導入が拡大してきた。しかし、低価格化が急速に進み、発電コストが従来の電源に匹敵、または勝るようになってきた。そのため、政策・規制による促進だけでなく、「経済的に」メリットが生じ、企業や電力会社による電力事業用のメガソーラー(大規模太陽光発電所)の開発が加速した。実際、2016年に電力事業用セグメントの設置容量は10GWを超えた。

 カリフォルニア州やハワイ州では太陽光発電の大量導入に伴い、日中に需要を上回る太陽光発電の余剰供給が発生し、系統の安定的な運用を脅かすと同時に、今後のさらなる太陽光の導入拡大の壁となっている。

 SPIでは、太陽光発電が昼間に生み出す「過剰」電力量に対応するため 、さまざま手法が議論された。例えば、自産自消モデルを促進するネットメータリング制度の改定、時間帯別電気料金プランの導入、デマンドチャージの導入、マイクログリッド、電力会社による分散型電源の統括計画など蓄電池を併用する政策、そして、新たなビジネルモデルなどを通じた「次世代のグリッド」などがテーマとなった(図2)。
図2●電力会社などの幹部が集まり、太陽光発電の大量導入に対する
グリッドへの対応が話し合われた
(出所:J. Movellan)
電力会社が蓄電の導入を加速

 太陽光パネルは大量生産によってすでに低価格化したが、蓄電池の市場は一体どうなっているのだろうか? 12日に行われた「ソーラーと蓄電池の交差点」と題する基調講演で、電力会社で構成される米スマートエレクトリックパワー協会(SEPA)でCEO(最高経営責任者)兼社長を務めるジュリア・ハム氏は...Read More Here

September 8, 2017

続報・米「皆既日食」、市場を使い、太陽光の出力抑制は1%に 広域ネットワークで再エネの変動を機敏に調整

Published at Nikkei Technology Online ---  8月21日、米国全土では1979年以来38年ぶりとなる皆既日食が見られた。午前10時20分ごろから西海岸オレゴン州で始まり14の州を横断し、東海岸のサウスカロライナ州まで、壮大な天体ショーが観測された。

電力の広域市場をフル活用

 カリフォルニア州は、米国で太陽光発電の導入量ナンバーワンで、日食の影響も大きいことが予想された。同州では、日食の際、起動と調整力で柔軟性に優れた電源である州内の水力発電と天然ガス火力で、太陽光発電の出力急変に対応し、グリッドの信頼性を保つことに成功した。これは8月22日に公開したこのコラムでもレポートした(関連記事)。

 カリフォルニア州は皆既食帯ではないものの、同州北部では76%、南部では58%の部分日食の範囲に入っていた。部分日食といえども同州の送電網には約10GWの発電事業用のメガソーラー(大規模太陽光発電所)が接続されていて、ピーク需要の30〜40%を賄うまでになった。さらに、同州の配電網には5.8GWの屋根置きを含む分散型太陽光発電も接続されている。

 カリフォルニア州の系統運用を担うカリフォルニア独立系統運営機関(California Independent System Operator; CAISO)は、太陽光発電の出力ロスによる供給不足を補うために、州内で発電所を稼働させると同時に、日食が地域を横切って移動し、異なる時間に異なる場所で太陽光発電に影響を与えることを利用し、西部電力システムネットワーク上での広域インバランス市場を活用した(図1)。
図 1●2017年8月21日におけるCAISO管轄内の電源別電力供給
(黄線:太陽光発電、赤線:火力発電、紫線:輸入)
(出所:CAISO)


インバランス市場の活用で再エネ統合
 CAISOはカリフォルニア州を管轄エリアとする送電事業と電力需要調整事業を担っている。さらに、前日市場と最終的な需給の差(インバランス)を調整するインバランス市場を運営している。

 米国西部諸州に拡大される再生可能エネルギーのグリッドへの連系、グリッドの信頼性と発電コスト削減を促進するため、CAISOは、同州で運営するインバランス市場の運営エリアを拡張し、2014年に西部エネルギーインバランス市場 (Western Energy Imbalance Market: EIM) の運営を開始した。

 西部EIMには 現在、カリフォルニア、オレゴン、ネバダ、ワシントン、アリゾナ、ユタ、コロラド、ワイオミングの8州に管轄エリアを持つ電力事業者が参加している。これらの州の電力事業者・発電事業者はCAISOのリアルタイム・グリッド・マネッジメント・システムにアクセスし、再エネの系統統合、系統安定化、発電コスト抑制に活用できる...Read More Here

September 4, 2017

2020年には「メガソーラー+蓄電池」がお得に!? 米NREL、太陽光普及後の経済性を単独設置と比較

Published at Nikkei Technology Online --- 浸透率6%では「太陽光単独」が有利だが…

 米国国立再生可能エネルギー研究所(The National Renewable Energy Laboratory: NREL)は、2020年には「大規模太陽光発電(メガソーラー)+大規模蓄電池」システムがメガソーラー単独のシステムより経済メリットが高まる、とするレポートを発表した。

 蓄電池システムのコストは下がってきてはいるものの、依然高いレベルにある。発電事業用の「メガソーラー+大規模蓄電池」とメガソーラー単独のシステムについて、発電所の設計、建設から運営、廃止までの全てのコストを、生涯発電量で割った均等化発電原価(Levelized Cost of Electricity : LCOE)で比べた場合、「メガソーラー+大規模蓄電池」の方が常に高くなる。

 これに対し、今回のNRELのレポートは、コストだけではなく、蓄電池が加わったことにより創出される価値を考慮し、便益(B=ベネフィット)と費用(C=コスト)の比率(B/C)で見る費用便益分析が行われた。具体的には、蓄電池設置による年間エネルギー収入と容量の価値(便益)を年間資本と運営コストで割ったものを比べた。

 現在の太陽光の浸透率は6%だが、このケースではメガソーラー単独のシステムの方が、「メガソーラー+大規模蓄電池」のシステムより費用便益分析で優れるが、太陽光の浸透率が上がると分析結果が大きく変わる結果となった。

2020年におけるメガソーラー単独と
「メガソーラー+大規模蓄電池」の費用便益比率比較。
Credit: NREL

メガソーラーと蓄電池の接続形態に4タイプ

 同費用便益分析では、太陽光パネルの設置容量65MW-DCのメガソーラーをモデルとして使い、パワーコンディショナー(PCS)の定格出力は50MW-AC、蓄電池の出力は30MW-AC、容量は120MWh-ACである。

 さらに、蓄電池とメガソーラーの接続タイプ、太陽光の浸透率ごとに結果がどのように変わるかを検討している。

 接続(リンク)のタイプは、「独立」、「交流(AC)リンク」、「直流(DC)リンク・双方向」、「直流(DC)リンク・一方向」の4タイプに分けられる。

 「独立」タイプは、メガソーラーと蓄電池システムを物理的に同じ場所に設置しておらず、制御機能なども共有されていないケースである。蓄電池はメガソーラーとは独立して稼働し、ピーク容量、ピークシフト、アンシラリーサービスなど系統網全体の安定化に対応する。さらに、1つの電源に接続していないことから、系統網上のどの電源からでも充電できる...Read More Here